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落ち着いた試合運びを見せる川内は、むやみに気の強さを誇示しない。だが、やがて相手が戸惑いを見せた瞬間、しばし微笑むことがある。このしぐさが自然だ。「自分は気が強いんだ」とアピールする選手よりも、ずっと肝っ玉のすわった振る舞いに感じる。
去年のドーハ・アジア大会でもそうだった。同い年で、親友でもある村田諒太(東洋大)が、初戦で完敗。その話に食らいつくときも、川内はまるでう嬉しそうに笑った。
「世界はやってくれますね。どんな光景なのか気になるじゃないですか。あれだけ強い村田がボコボコっすよ?」
純粋な好奇心なのだろうか。最近はさわやかさすら出てきた川内だが、時折り、闘うことに対する冷徹さを見せるのだ。
元ライト級高校3冠王の川内は、腰痛と脱臼を克服し、順調に国内最強をキープしてきた。課題だったストレート以外のパンチも習得し始め、多彩さもアップ。帰省中に九州大会を観たプロボクシング日本&東洋S・ウェルター級王者クレイジー・キムも、川内をアマチュアのイチオシ選手として絶賛している。相手に合わせてテンポを変える“ずる賢さ”に関心を示した。
縁がなかったのは、国際大会だけ。だが4年生となる今季は、4月からタイ・キングスカップに出場する。いよいよ、川内も一歩先の領域で、試される。
「国際大会の感想って、色んなことを言う人がいるじゃないですか。もっと攻めたほうがいいとか、足を使ったほうがいいとか。最初は、経験の差って言ってた人も、やる度に違う実力差に気づきますよね。動揺するのもイヤなんで、なるべく把握しておきたいです」
キングスカップでは、世界最強の壁が待っている。タイのマヌス・ブンジュモンが、来年の北京五輪に合わせ、久々にキングスカップへ参戦するというのだ。ブンジュモンは、他でもないアテネ五輪の金メダリスト。そのハイレベルな逃げ足は、ドーハ・アジア大会でも、さび付いた様子はまったく見せずに優勝を獲得した。さらに、先日、タイで行われた陸軍ゲームでは、2階級上のミドル級で出場。同級のアテネ五輪・銅メダリスト、スリヤー・プラーサシンピマイを破って優勝したという。
国際大会デビューとなる川内にとって、この壁は大きすぎる。しかし臆する様子はまったくない。
「自分は何でもやりますよ。注意をされないように。捕まえるのが難しいのは分かってますけど、、やっぱり優勝を狙いたいですね。ゴングが鳴ってからは、何も考えずに行きます」
早速、スパーリングを増加。海外でもポイントを量産させるため、得意の左ストレートを研ぎ澄まし始めていそうだ。
「ここからスタートをして、大学を卒業してもボクシングを続けたい。頑張って、できればブンジュモンを退治します」
川内はまたニヤリと笑った。国内最高クラスの距離感は、決して「日本人マニュアル」の枠には、とどまっていないはずだ。 |