出会い

私とボクシングとの出会いは、今から5年前に遡る。
当時、私は、写真を専攻する青臭い大学生だった。卒業を1年後に控え、自分は何が撮りたいのか、何をするべきなのか、自問自答する日々を送っていた。
そんなある日、深夜放送のテレビチャンネルを回していると画面から鈍い音が聞こえてきた。ボクシングだった。後楽園ホールで、行なわれていたノンタイトルの試合だったと記憶している。パンチを繰り出す度に汗が飛び散り、己の全てを見せ付ける。何気なく見ていたボクシングに、いつの間にか夢中になっていた。
ボクシングが見てみたい、そしてボクサーに会ってみたいという思いが日に日に強くなりはじめた。
そう考えた時、ボクサーをテーマにした写真を撮りたいと思った。
彼らは、どのような思いで、ボクシングをはじめ、何を思いながらリングに上がるのか。
その生き方に触れてみたいと思った。

次の日、私は、都内にあるボクシングジムを調べ、いくつかのボクシングジムに自分の思いを書き綴った手紙を書いた。

それから2週間後、私のもとへ、一通のメールがきた。その内容は、「いつ来ていただいても結構です」というものだった。送り主は東京の板橋にあるF・Iボクシングジム。まだ開設して間もないジムは、地下鉄のガード下にあり、私のイメージ通りの渋いジムだった。
初めてボクシングの世界に足を踏み入れる私は、恐怖と不安でいっぱいだったのを覚えている。恐る恐るドアを開けた私に大きな掛け声を掛けてくれたのが、福田洋二会長だ。
会長は、快く私のような若造を受け入れてくれ、ボクシングというものを熱のこもった解説で語ってくれた。多くの世界チャンピオンを育て、長年この世界で生きてきた会長の言葉は、どれをとっても重みがある。

ボクシングを撮ることが出来る喜びに満ち溢れていた私は、とにかくシャッターを押しまくった。その内のベストショットを暗室(当時はまだフィルムが全盛だった)で、引き伸ばし、必ず選手に渡した。そうしているうちに選手との会話が生まれ、やがて信頼してもらえるようになっていった。それが、何よりも嬉しかった。

5年前は10人にも満たなかったプロボクサーも、現在は、3倍もの人数になり、生え抜きの選手の中から、日本、東洋ランカーも誕生した。
このジムで、私は、多くのボクサーと出会い、彼らの生き様を見てきた。すでに引退した者もいれば、これからチャンピオンベルトを目指す者もいる。このガード下から多くの夢が生まれ、少しずつではあるが形になりつつある。

私にとってF・Iボクシングジムはかけがいのない存在となった。

ここから世界チャンピオンが誕生する瞬間を夢見ながら今日もシャッターを押し続けている。

最後に、私にボクシングとの出会いを与えてくださった福田洋二会長、F・Iボクシングジムの皆様に感謝申し上げます。

中西祐介



中西祐介プロフィール

1979年 東京生まれ

東京工芸大学 芸術学部 写真学科 卒業

講談社写真部 勤務を経て、現在、アフロスポーツに所属。

ボクシングをはじめとするスポーツ現場から人物ポートレートまで、幅広く活動中。


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