トーク・イズ・チープの再スタートについて

 このトーク・イズ・チープがスタートして来年で早、10年になります。メンバーも変わり、発足当初のメンバーで残っているのは加茂さんと僕だけになってしまいました。でもその直後に加わった新田渉世さんらが、鉄の意志でこのウエブサイトを維持してくれたお陰で、まだ潰れないでいる次第です。本当に感謝すると同時に、怠け放題怠けた我が身を恥じるばかりです。 


 人生とは不思議なものです。つい最近、既に婚約者がいる女性から「一緒に死んで下さい」という電話があり驚嘆しました。その女性とは10年来の知己で、だからと言ってもたまに居酒屋で遭遇するような間柄。全く情緒的な関係ではありません。で、彼女の居場所に駆けつけたらもう大酩酊状態。1時間ほど、酒を酌み交わしていたのですが、彼女が多量の睡眠薬をハンドバッグから取り出してきて「“半分こ”しても大丈夫、二人とも死ねますよ」と、にっとした笑顔でそう言うのです。
 僕もこの年齢だけど身寄りがないことを見込んでの「心中依頼」だったのでしょう。
 今は詳細は避けますが(当然、彼女の事情も含めて)まあ、結局、二人とも「とり合えず生きるか」と言った約束ともつかない言葉を取り交わし何事もなく別れたのですが、別れた直後、わけも分からず涙が止まらなくなり、困りました。その後、自分を襲ったのは「実は一緒に死にたかったのかも知れない」という 自分に対する驚愕でした。勿論、僕には自殺願望もないし、まだこの人生でやり残したことは沢山あります。
 でも、やり残したこととはなんなのか。そう自分に問うても、実は明確な答えは見出せません。ただそれは、僕らの年代には多少の差こそあれ、誰にもが感じる感情なのではないでしょうか。

 僕も還暦を迎えました。同期の連中は、一握りの人間を除いて、皆元気一杯なのに、そのほとんどが、これといったやりがいのある仕事もとり上げられ、あるいは見出せず、妻や子供にはないがしろにされ、孫を可愛がろうとすると、娘から邪険にされる男ばかり。それは彼らの切ない愚痴によって僕に伝えられるので すが、生涯独身を通している僕としては、複雑な思いです。
 でも感じるのは「何か、疲れちゃったなあ」という共通した思いだと思うのです。多くの家族を持ち、多くの孫に囲まれながら、「俺は幸せだよ」と言う人間にはよく遭いますが、僕の親しい友人では、そんなことを口にする男は滅多にいません。
 そんな友人関係と僕自身の疲弊感が「死の願望」を惹起したのかも知れませんが、それは「まだ強く生きたい気持ちの裏返し」と看破したのは、かの釈尊です。
 ―これから、若い人には理解できない感慨を多く記すようになるかも知れませんが、縁があったら是非一読してください。

        丸山幸一



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●丸山 幸一 (まるやま こういち)
1947年東京都台東区出身。72年早稲田大学第一文学部を卒業後、今はなき東京タイムズ社に入社。74年から運動部でボクシング、競馬、高校野球、ゴルフ、プロ野球のパ・リーグ等を担当。81年同新聞社を退社。以後フリーランスに。リライター、映画ライター等を経て85年からボクシングを主な分野として、共同通信社、デイリースポーツ社、ボクシング・マガジン等に原稿を掲載。趣味は酒

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