薄っぺらな空気とジャッジペーパー

 私個人がよく聞かれる質問に「亀田兄弟は本当に強いのか?」というのがある。

 私はその度に「強い」と答えている。

 考えてみれば、普通の子供が公園で砂遊びをしている時にボクシングを始め、学校ではまともに勉強も部活もせずボクシング三昧の生活を送り、プロ入り後も他のボクサーが生きて行く為に一日の大半をアルバイトに費やしてその体力と神経を無駄に削っている中、ボクシング一本の生活を送り、頻繁に走り込みのキャンプや海外武者修行を慣行していれば、どんなに才能の無いボクサーでも強くなるのは当たり前であり、亀田兄弟は世界一環境に恵まれたボクサーだとも言える。

 まして中南米の強豪が少なくアジアのボクサーが大半を占める軽量級で、ボクシング界ではまだまだ絶大な力を持つジャパンマネーの威力で簡単に世界に挑戦出来、更に敵地で闘う必要もないのだから、本当ならもう世界タイトルを何度も防衛してなければおかしいぐらいだろう。

 あと他によく亀田兄弟の世界戦の予想を聞かれるが「兄キは内藤選手に勝つだろうが、弟は倒される」と答えて来た。

 先日行われたその弟の試合だが、どうせ倒されるだろうと採点もしないで眺めていたが、予想以上の闘いぶりに驚いた。デンカオセーンの調子の悪さと一発の狙い過ぎに助けられた面も多分にあるがその成長ぶりに目を見張った。

 協栄ジムと決別した亀田兄弟だが、未だ場外でファイトマネーの未払い問題で醜い争いを繰り広げている中、協栄ジムOBの解説陣の歯切れの悪さは酷く、世界戦特有の緊迫感や臨場感がまったく伝わって来なかった。

 まさかの判定まで行ったが、地の利もあり私は弟が勝ったと思った。

 しかし結果は0−2の僅差の負けだった。

 後日採点表を見ながらビデオを見て不審な点に気が付いた。

 先ず1ラウンドだが、このラウンドは僅差で弟が取ったと思ったが、ジャッジ3人が割れもしないでそろいもそろってデンカオセーンに付けている。

 そこにデンカオセーンを勝たせようという意気込みがありありとうかがえる。

 そして10ラウンド。このラウンドはどう見ても弟のラウンドだが、これも3人仲良くデンカオセーンに付けている。

 10ラウンドを終えた時点で最低でも2ポイントの差を付けていれば、残り11,12を全て弟が取ったとしても最低でもドローでデンカオセーンの防衛だ。

 10ラウンド終了の時点でデンカオセーンの防衛を確実にしたジャッジ達は安心したのか11,12と3人揃って弟に大盤振る舞いでポイントをくれている。

 レフリーも再三デンカオセーンにホールドと後頭部への加撃を注意しておきながら結局減点は取らずじまいで終わった。

 デンカオセーンを勝たせようとした力が背後で動いたとしか私には思えない・・・・・・。

 後日亀田ジムがWBAに採点の不満を訴え提訴したが、長男の方はもっと酷い判定で勝ちにしてもらっておきながらの提訴とは実に笑止千万だ。

 更に最近長男がやたらと亀田親父のボクシング界への復帰をアピールしているが、背後で親父が息子に言わせているのは想像に難くない。

 反省した素振りを見せこちらが甘い顔をして気を許すと一気に懐に入り込み豹変するのはまったくヤクザと同じ手口だ。

 これからのボクシング界の行く末等これっぽっちも考えていないメディアやマスコミは無批判に長男の発言を垂れ流し続け、亀田親父復帰への空気を作り上げるだろうが、ボクシング界は亀田親父の復帰を断固拒否しなければならない。

 
 私が亀田ファミリーを批判している事など知らない人達を含め私が接した人達の中で亀田親父に嫌悪感を持たない人間は一人もいない。

 もしボクシング界が亀田親父の復帰を認めれば、長男、次男に更に三男まで加わった今ではその三人の試合の度に亀田親父の粗暴な顔や態度がテレビに出る事になり、一般の人にボクシングのイメージを悪くさせボクシングから離れさせて行く事になる。

 長い目で見てボクシング界に取って歓迎すべき事ではないが、私の予想通り長男が内藤選手に勝ったとしたら、長男は声高にそしてしたたかに父親復帰の願いを世間に訴えるだろう。

 
 ボクシング界はマスコミが作り上げる薄っぺらな空気を読む必要等、どこにもない。
 




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●池田高雄(いけだたかお)
昭和44年宮崎生まれ。平成元年プロデビュー。リングネームは憧れのボクサー高橋ナオト氏にあやかり池田タカオ。B級、A級各トーナメントを制し95年にクリス・サギドの持つ東洋タイトルに挑むも判定負け。同年引退。3年半後にメキシコに渡り紆余曲折を経て妻を連れタイへ。タカオ・チュワタナの名で1年間に9戦し、2001年空位のPABA王座を後のWBAスーパーバンタム級王者のソムサックと争い7ラウンドTKO負けを喫し完全引退。元日本、東洋、タイ、ともに1位。

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