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世間では亀田フィーバーが去って今度は内藤フィーバーが吹き荒れている。
しかしその取り上げ方が「時給900円のアルバイト生活」だの「月給12万円の極貧生活」と言ったまったく中身の無い表面的で薄っぺらな内容ばかりだ。
なぜ、世界チャンピオンに成る様な男がこんな貧しい生活をしなければならないのか?
なぜ、プロとは名ばかりでほとんど全てのプロボクサーは他に仕事を持たなければならないのか?
なぜ、大手のジムの会長達は高級国産車や外車を乗り回しながらボクサー達は自転車なのか?
そこまで掘り下げて追求した記事は残念ながら見当たらなかった。
ボクサーにはプロ野球選手達と違ってファイトマネーに対する交渉権といった物は存在しない。
ジム側が提示する額を黙って受け取るのみだ。
ボクシング界の上の人達は今回の時給がいくらだの月収がいくらといった一連の報道を受けて恥ずかしく思わなくてはならないはずだが、そんな感情は持ち合わせてはいないようだ。
給料に対する交渉権はまったく無く搾取されるだけ搾取され、その上他の職場にも自由に転職出来ない、いわゆる移籍が出来ないボクシング界は異常な世界である事に誰も気が付かないのか?
バカの一つ覚えの様に「構造改革」を訴え続けて来たマスコミ連中はボクシング界の構造改革こそを取り上げるべきだが、大新聞でさえ亀田ファミリーの悪行を批判するだけにとどまり非常に残念だった。
ボクシングを始めたきっかけであり、リングに上がり続ける原動力であるいじめられっ子の過去をマスコミ連中によってしつこくほじくり出されその思いを全て吐き出させられた内藤選手はモチベーションが枯渇し、次の防衛戦で敗北そして引退となるだろうが、負けたらマスコミ連中は手の平を返して誰も見向きもしなくなる。そうなる前に内藤選手にはどうしてもやってもらいたい仕事がある。
それは「袴田事件」を世の中に訴える事だ。
私の先輩であり新田ジム会長の新田渉世氏が義憤に駆られて立ち上がり、今静かに再燃しつつあるこの「袴田事件」をマスコミに訴え世論を動かしてもらいたい。
ボクシング関係者で「袴田事件」を知らない人間はいないと思うが、一般の人にはまだあまり知られていない。
この袴田事件に関しては山本徹美氏の500ページにわたる力作「袴田事件」に非常に詳しく書かれているが、今回勝手ながら私が気になる点を何箇所か要約させていただく。
先ずその事件の内容とは、一家4人が合計45箇所以上刺されて惨殺されその後証拠隠滅の為放火までされたという陰惨な事件であり、その犯人とされたのが殺された一家の主が経営するみそ工場で働きその工場の二階に下宿していた元日本フェザー級6位の袴田巌さんだった。
逮捕のきっかけになった証拠品の一つに袴田さんの部屋のゴミ箱から見つかった血の着いた脱脂綿と布団の上に無造作に置かれたパジャマがあるが、これらは放火された一家の消火作業中二階から誤って転落した際にトタン屋根で切った傷からの出血だと袴田さんは主張する。
もし袴田さんが犯人だとして、わざわざ証拠になるような品を無造作に部屋に置いとくだろうか?
犯人は証拠になる様な物を全て消すために放火をしたはずなのに、だ。
しかもそのパジャマからは血痕らしきものがわずかに判明しただけだった。警察が主張するように犯行時袴田さんがパジャマを着ていたら、一家4人合わせて45箇所以上の刺し傷を負わせている訳だからかなりの返り血を浴びているはずだ。
それがわずかな血痕らしき物が認められる、と言うだけでこのパジャマの持ち主の袴田さんを容疑者として逮捕した。
袴田さんは警察署に拘留されるがその後の取調べは言語を絶する酷さだ。
わずか三畳半程の取調室での尋問は一日平均12時間に及び酷い時は16時間、朝から深夜2時にまで及んだ。その間食事は朝一杯の麦飯とみそ汁、昼はパン、夜は再び一杯の麦飯とみそ汁という実に酷い物で袴田さんは栄養失調状態に陥いる。
更に深夜独房に戻され眠りにつこうとすると隣の房に暴れ騒ぐ酔っ払いをかわるがわる入れ袴田さんに睡眠を取らせない様にした。
この取調べ期間は夏真っ盛りの時期だったが、クーラーや扇風機等もちろん無く袴田さんが流れ落ちる汗を拭こうものならその手を叩き怒鳴り散らし髪の毛を掴んだ。
しかもトイレにも行かせてもらえず取調室の隅っこに置いた簡易便器にさせられた。しかも真夏のこの時期に入浴は一週間に一度だけという非道さだ。
そしてついに取調べ20日目、耳鳴りとめまいを起こしまともに起きていられなくなった袴田さんは「お願いだから少し休ませてください」と懇願する。すると警察は「ここに名前を書け」と言い放つ。ほとんど思考力すらなくなった袴田さんは休みたい一心で警察が作り上げたでたらめな供述書にサインをした。
それだけで袴田さんが犯行を自白した事になり犯人と断定された。
サインをした後「私はやっていない」と言う袴田さんに対し警察は「もう認めたじゃないか、この上否認なんかしたらお前のおふくろも兄弟も留置して調べる。そしたら息子は誰がみるんだ?」と脅かした。
袴田さんはこの脅しが一番身にこたえた、と言う。
袴田さんが一人息子をいかに愛していたかがよくわかる。
警察が作った供述調書には犯行の動機は袴田さんが息子と袴田さんの母親と三人で住むためのアパートを借りる敷金5万円欲しさに雇い主宅に強盗に入った事になっている。
袴田さんは結婚後男の子を一人もうけるが、奥さんは他に男を作り子供を捨てていなくなった。袴田さんはその子を実家に預けて工場で働いていた。
袴田さんは非常に子煩悩だったらしく必ず一ヶ月に一度実家に帰りその日は一日中子供と遊んでいたそうだ。
そんな袴田さんを見てお母さんがもっと実家に近い所で働けばどうか?と聞いたところ、こんなにいい給料がもらえる所は他にないから、と言ってお母さんのその提案をことわった。
サラリーマンの平均月給が2万円だった時代に3万円もらい、飲みに行けば小遣いまでもらっていた袴田さんは殺された経営者に対して感謝の念しか持っていなかったはずだ。
しかも経営者が殺された一月後にはボーナスを合わせて6万円もらえるはずだった。
常識的に考えて一月待てば6万円が手に入るのに、5万円の金欲しさにお世話になって感謝の念すら持っている人の家に刃物を持って強盗に入るだろうか?しかもかわいい盛りの3才の子供がいるのに、だ。
袴田さんには強盗殺人事件をやる動機がまったくない。
更に警察は凶器とされている現場に落ちていたクリ小刀の販売店を突き止め、その店主の奥さんにみそ工場の従業員28人の写真を見せこの中にクリ小刀を売った人物がいるか聞くのだが、なんとその中に袴田さんの写真だけ二枚入れていたのだ。なんたる卑怯なやり方だろうか。
そして警察の思惑どうりその夫人は袴田さんの二枚目の写真を取りどこかで見た事がある、と話す。
警察はこのあやふやな発言一つで袴田さんが凶器を購入したと断定。更にあろうことか裁判所もそれを認めた。
警察の作ったでたらめな供述調書に袴田さんの犯行時の描写があるが、それによると袴田さんは主人に見つかり怒った主人が袴田さんの足を蹴り更にすねを蹴り上げているが、深夜寝起きに刃物を持った強盗相手にキックボクサーでもない一般人が至近距離からとっさに蹴りを放てるだろうか?
しかもその後袴田さんはその主人を殴ってその勢いで膝をついた、とあるが、30戦程の試合のキャリアがある元ボクサーが酔ってもいないで、空振りもしていないのに相手を殴ってその勢いで膝を着く、何て事は絶対にありえない。
更にこの供述調書には袴田さんや殺された主人と奥さんが何度か叫んでいるが、「歌を歌ってても聞こえる」と言う程隣接している両隣りの住人は誰一人としてその叫び声を聞いていない。
更に警察は犯行時家族は全員寝ていたと言う事にしているが、主人も奥さんも腕時計をしており、娘さんは制服を着ており息子さんはワイシャツにシャ−プペンシルが差してあった。
これが就寝時の服装だろうか?
しかも隣家の人の証言に「いつも九時半ごろに息子さんが下駄を鳴らしてトイレに行く音が聞こえるがこの日は聞こえなかった」とあるが、検察はこの証言をまったく取り上げなかった。
なぜなら袴田さんには10時半までは部屋で他の従業員とテレビを見ていたというアリバイがあるからだ。
検察は袴田さんを犯人にする為にこの隣人の証言を完全に無視した。
更にこの事件を象徴するするのが、一家の17才になる次女の殺され方だ。
ここに書くのがはばかれる程の理解不能な殺され方なのだが、もし袴田さんが犯人なら警察はなぜそのような殺し方をしたか尋問するのが当然だと思うが、まったくその形跡はなく裁判でも検察はまったく取り上げなかった。
警察は犯人ではない袴田さんに理由を聞いても答えられないと思っていたに違いない。
更に袴田さん拘束後一年が過ぎた頃、突如みそ工場のタンクの中から血痕のついた衣類5点が発見される。
その衣類発見後いきなりと言っていい唐突さで袴田さんの実家を警察が家宅捜査する。
そこで警察はしらじらしくもタンスの奥から一枚の布切れを見つけたと言い、この布切れは発見された5点の衣類の中のズボンと一緒の生地だと断定し、袴田さんのお母さんもそれを認めたと発表した。
発見された5点の衣類は一家殺害後犯人が捨てた物と断定され、そのズボンの持ち主である袴田さんが犯人だと検察は主張する。
裁判で袴田さんのお母さんはその布切れが袴田さんの持ち物だとは警察に認めていないと主張するが、なんと裁判官はお母さんの発言を「あいまいかつ作為的で信用しがたい」として却下し袴田さんに死刑を宣告した。
突如として現れた衣類5点発見後いきなり袴田さんの実家を家宅捜査し、誰も見ていない隙に布切れ一枚を発見したと主張する警察の方がよっぽど作為的ではないのか?
袴田さんのお母さんは、自分がもっとはっきりと否定していれば息子を死刑にさせずにすんだのに・・・・・と死ぬまで自分を責め続けたに違いない・・・・・・。
しかしそれから数十年後、そのズボンのサイズがウエスト83センチの物を80センチに詰めてあり、当時の袴田さんのウエストが76センチだと言う事実を発見する。
著者の山本氏が指摘するようにそれだけサイズが違えばズボンがずり落ちないように必ずベルトをするはずだがそのベルトは発見されていない。
犯行後ベルトだけはずして証拠になる衣類を捨てたなんて事はありえないだろう。
しかも5点の衣類が見つかったみそタンクの隣りにはボイラー室がある。ボイラーの中に犯行に使った衣類を投げ込めばそれで証拠は跡形も無く消える。なぜ必ず発見されるみそタンクの中に自分の衣類をわざわざ捨てなければならないのか?
この衣類の見つかった一件は静岡県警清水署が袴田さんを犯人とする為に作り上げたでっち上げでしかない。
その他ここでは書き切れない程の数多くの矛盾点があるのだが、その無数の矛盾点を何一つとして説明出来ない検察はなんと「殺人事件には不条理、非合理があって当たり前」と開き直った。
そしてそれをあろうことか裁判官がその馬鹿げた発言を認め何一つ矛盾点を解明出来ないまま袴田さんの死刑が確定された・・・・・。
これで日本は本当に法治国家と言えるのか?
昨今耳を疑うような凶悪事件が後を絶たないが、それらの事件の犯人達は犯行時精神衰弱状態だっただの未成年だったとかで驚くような軽い刑で終わっている。
それがなぜ、犯罪を犯した確固とした証拠は何一つ無い袴田さんが死刑に成らなければならないのか?
私がこの山本徹美氏の著書「袴田事件」を読んで怒りで体が最も熱くなった部分は、検察が袴田さんを犯人だと認める理由の一つに「前歴が元ボクサーで・・・・・・」という一文がある。
前歴がボクサーだからなんだというのだ!
更に検察は最高裁の場で袴田さんの事を「ボクサーくずれ」と吐き捨てた。
まがりなりにも従業員30人規模の会社に勤め上げ、子供も養育しつつましく生きてきた元ボクサーをボクサーくずれと呼ぶのなら、全ての元ボクサーはボクサーくずれと言う事になる。
袴田さんが獄中からトクホン真闘ジムの佐々木会長に送った手紙の一文にこう書いてある。
「私は二つの拳で闘って来たボクサーなんです。ボクサーであった事が私の唯一の誇りなんです。凶器を持って人を殺せると思いますか」
国家権力をかさに着る警察と検察は袴田さんの唯一の誇りを無残にも踏みにじった。
今も昔もボクサーを見下し、偏見を持つ輩は掃いて捨てる程いる。
私も引退後そんな偏見の目に晒された事は一度ならずある。
ボクシングに青春の全てを、いや、人生の全てを賭けて闘っている今の若いボクサー達が引退後、私と同じ様な悔しい思いをさせたくない、その一念でボクサーのイメージを著しく地に落とす亀田ファミリーの所業を一貫して非難して来た。
袴田さんは全ての元ボクサーを代表して、世間の言われ無き偏見とたった一人で闘って来たのだ。
袴田さんを獄中から救い出す事は、ボクシング界の使命でなければならない。
囚われの身になった仲間は何がなんでも救い出す。
拉致被害者を見捨てる薄情な日本政府とは我々は違うと言う事を、亀田騒動で拭い切れない汚点を着け世間が注目する今こそ、ボクシング界は内外にその決意を知らしめる時だ。
亀田兄弟を散々持ち上げて彼らの傍若無人さをより尊大な物に助長させたボクシング専門誌やスポーツ新聞全紙は、せめてもの罪滅ぼしの為に、この袴田事件を大々的に取り上げるべきだ。
内藤選手には「亀田に勝った男」だけではなく「無実の元ボクサーを救った男」としてその名をボクシング界の歴史に残してもらいたい。
ここに袴田さんが獄中から愛する一人息子に送った手紙の一文がある。
「お前のチャンは決して人を殺していないし、一番それをよく知っているのが警察であって、一番申し訳なく思っているのが裁判官であることを」
自分を犯人に仕立て上げた警察や自分に死刑判決を下した裁判官を恨む事無く同情の念すら持っている袴田さんの心根の優しさに強く打たれた・・・・・・。
女性を愛する自由も、子供を抱きしめる自由も、突然理不尽に奪われてすでに40年の月日が流れた・・・・・・。
袴田さんもすでに70才。
残された時間はあまりにも少ない・・・・・・。
しかしここに来て新田会長の不断の努力が実を結び、ボクシング関係者としては実に27年ぶりに袴田さんとの面会を果たす快挙を成し遂げた。
更に袴田さんに死刑判決を下した最高裁判事の3人の内の1人の方が、袴田さんは無罪だと思いながらも圧力に屈した・・・・・と、涙ながらに衝撃の告白をした。
そしてこの元最高裁判事の方は袴田さんを救う為、弁護士資格を取得されるとの事。
確実に追い風が吹いて来ている。
この風こそが袴田さんを救う神風だと、私は信じたい。
「袴田事件」報告
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