責任

 今回の一連の亀田騒動に関して私なりに総括してみたい。

 先ず各論として次男坊の反則行為だが、12ラウンドのレスリング行為ばかりが取りざたされているが、内藤選手を持ち上げてからは力を抜いて落としているのでダメージはさほどないだろう。しかしそれ以上に危険で悪質な反則行為が行われていた事に誰も気が付いていないようだ。

 それは2ラウンド1分5秒に次男が放った肘打ちだ。

 稚拙な為に当たらず内藤選手本人も気が付かなかった様だが、もしこの肘が次男の狙い通りに当たっていれば必ず大量の出血を起こし、肘打ちとパンチを見分けられないレフリーによって次男のTKO勝ちにされた危険すらあった。

 その次男の肘打ちのやり方だが、先ずベルトラインギリギリのローブローを放ち、レフリーや観客の視線をそちらに集めた瞬間肘をテンプルに返すという実に驚くほどの用意周到さだ。

 この非常に悪質な反則行為は試合後亀田親父が弁明していた様に「若さ」とか「未熟さ」で説明出来る物ではない。

 更にボクサーが絶対防ぐ事が出来ない太ももへのローブローも卑怯にも執拗に繰り返された。

 私が以前指摘したが長男も肘打ちや太ももへの打撃をしており、ボクシング関係者の誰もが気が付かない巧妙さで肘打ちを試合でやれると言う事は家族全員で肘打ちの練習をしている事の証明に他ならない。

 親父も長男も弟に試合中に反則行為の指示を出していないと言うが、それ以前の問題であり、この肘打ちの件を追求すべきだったが、派手なレスリング行為ばかりが取りざたされ非常に残念だった。

 しかしげに恐ろしきかなは、亀田ファミリーが他に誰もいないあの自分達のジムで反則の練習を繰り返していたと言う事だ。

 日本全国にボクシングジムは数多くあるが、選手に反則行為を練習させる会長やトレーナーはいない。

 それはボクシングを、そしてボクサーを愛するがゆえである。

 亀田ファミリーはボクシングを愛してるからボクシングをやっているのではなく、自分達が成り上がる為の道具か手段ぐらいにしか思っていない。

 引退したらジムを開いたり、後進の指導をしたりとボクシング界への貢献をしようといった殊勝な考え等さらさらなく、芸能界にでも入って楽して金を稼ごうぐらいにしか考えていないだろう。

 
 しかし今回の亀田ファミリーへの処分は実に甘いの一言だ。

 もしこれが弱小ジムの一トレーナーが亀田親父と同じ行為をしたとしたら、とっくの昔にコミッショナーは問答無用にライセンスを剥奪しているはずだ。遅きに失した感は否めない。

 兄弟に関しては二人ともライセンスの無期限停止にすべきだった。2,3年頭を冷やさせどうしてもボクシングをやらせてくださいと、記者会見を開き土下座をして謝罪させるべきだ。

 切腹する事に比べれば土下座ぐらいたいした事はないだろう。

 逆にそれぐらいやれば同情票を買い亀田人気も再び盛り上がるはずだ。品行方正な新生亀田兄弟で売り出せばいい。

 しかし今回の中途半端なペナルティーでは更正はおぼつかない。

 一年のライセンス停止は長すぎると言う意見も聞かれるが、10代の一年ぐらい試合に出なくてもたいした影響は無い。逆にそれでダメになるようだったらそれまでの選手と言う事だ。

 東日本ボクシング協会の理事会で次男に対する温情意見も多数出たらしいが、そんな甘さが彼らをここまでつけ上がらせたと言う事にまだ気が付かないのか?

 昨今未成年者の凶悪犯罪が後を絶たないが、彼らを未成年者だからと庇い罪を軽くした結果、凶悪犯罪は減り彼らは更正しただろうか?更に凶悪な犯罪を繰り返すのが落ちだろう。

 この機会にしっかりと更正させないと後々彼らは渡辺二郎容疑者以上の害悪をボクシング界に撒き散らす事になるだろう。

 そうなった際、今回の理事会で温情意見を出した理事の面々は責任を取る覚悟があるのだろうか?
 
 
 次男も本当に反省しているのなら、どうせ兄貴のサル知恵だろうが丸坊主にするような小細工等せず、坂本博之氏が主宰する「こころの青空基金」にファイトマネーを全額寄付すればいい。10代の子供に大金等必要ない。逆にそれぐらいやればバッシングは一気に鎮静化に向かうだろう。
 
 
 しかし亀田ファミリーは罰せられたが、彼らを利用し持ち上げ媚を売った大人達は誰一人として罰せられていない。

 先ずメッキにまみれた虚像の亀田ブームを作り上げたTBSは謝罪をしたのか?

 情報操作と偏向報道を繰り広げ国民を欺いたその罪は極めて重い。今すぐ「報道のTBS」の看板を取り下げるべきだ。

 このTBSを筆頭にしてメディアやマスコミ、特に提灯持ち記事を書き続けたボクシング専門誌やスポーツ新聞の記者達や、マスコミに迎合し亀田兄弟の数々の反則行為をなんの批判もせず絶賛し続けた元世界チャンピオンの評論家達、更に亀田人気にあやかろうと擦り寄ってきた中身の無い芸能人やキャスター達の罪も大きい。

 
 散々亀田兄弟を持ち上げて媚を売り続けた挙句、その舌の根も乾かぬうちに一転して亀田批判を展開するマスコミ連中のその姿は実に卑しい。

 戦前、発行部数を増やさんが為「鬼畜米英」等と無闇に国民の戦意を高揚させ軍部の権力に擦り寄りながら、戦争に負けた途端一転してGHGにすがりつき、正義感づらしてある事ない事軍部の批判をし続ける当時のマスコミ連中の卑怯者の精神は現在でも連綿と受け継がれているようだ。

 更にそのTBSの片棒を担ぎ一度たりとも亀田兄弟の反則行為をとがめず、嘘八百を並べ立てて亀田兄弟を擁護し続けた鬼塚勝也氏の責任も重い。

 自身のブログで見苦しい弁明を繰り広げているらしいが、そんな暇があるなら記者会見に亀田ファミリーと一緒に出て今まで通り亀田兄弟の擁護をすべきだろう。

 鬼塚氏本人が「解説者失格」と認めているのだから、もちろんその責任を取って解説者の職を辞す事と思う。

 
 そしてこの試合を裁いたレフリーは例によって1ラウンドから11ラウンドまでは露骨な亀田サイド寄りのレフリングだった。次男坊が放つ太ももへの執拗なローブローやバッティング、クリンチの際のサミングを一度も減点を取らず逆に内藤選手から減点を取る始末だった。

 早い段階からこのレフリーが私心を捨て公正なレフリングに務めていれば、最終回のあの様な暴挙は起こらなかったはずであり、よってこのレフリーの責任も大きい。
 
 
 しかしそれ以上に亀田兄弟の監督責任があり、ほっとけば虫歯になる事を教えず自由と言う名の甘いお菓子を与え続け、世界戦をやる実力も実績もないのに抗議までして世界ランキングにねじ込ませ、今回の世界戦を強行した協栄ジムの金平会長の責任も極めて重い。

 しかし東日本ボクシング協会から強い要請を受けJBCが出したその処分は無きに等しい。最低でも半年以上の営業停止を課すべきだ。

 しかし馴れ合い所帯のボクシング界ではこれが精一杯のペナルティーのようだ。

 
 更に今回の世界戦を承認したJBCの責任も深く追求されるべきだ。

 試合直後JBCは次男坊の反則行為に対してなんのペナルティーも課さないと明言したが、翌日の抗議の電話の多さに恐れをなして一転して厳罰に処すと発表するとは実に情けない限りだ。

 今回、ボクシングを冒涜したと言われる12ラウンドのレスリング行為だが、私としてはそれ以上に次男坊の世界チャンピオンに対する「ゴキブリ」発言や、数多くの若き貴い命が眠る神聖なリング上での「切腹」発言の方がよっぽどボクシングを冒涜していると思ったが、この暴言に対してボクシング界はなんらアクションを起こさなかった。

 元ボクサー等ほとんどいないJBCには所詮ボクサーの気持ち等わかるまいとまだ諦めもつくが、ボクシング協会は違う。

 元ボクサー、しかも多数の元世界チャンピオン達が加盟しているボクシング協会がこの暴言を黙認し続けている事に対してほとほと情けなくなった。

 そして今回、この一連の騒動を象徴するシーンがテレビ画面に堂々と映し出された。

 それは次男坊がたいそうな格好でリングに入場して来た時、はち切れんばかりの満面の笑みを浮かべ拍手までして一番最初に次男坊を迎え入れた人物が、何を隠そうボクシング協会の会長、ファイティング原田こと原田政彦氏だった。

 ボクシングを散々冒涜し世界チャンピオンをコケにした子供をボクシング協会のトップにいる人間が手もみして迎え入れるその姿に吐き気すら覚えた。

 原田氏は数多くの日本人ボクサーの中で世界中から最も評価されているボクサーのはずだが、ボクサーとしての誇りと魂を金で売ったと非難されてもおかしくないだろう。

 日本が貧しかった時代のこの世代の元ボクサー達は夢やロマンの為にボクシングを始めた訳ではなく、ただ金の為にリングに上がっていたのでボクサーを所詮金を稼ぐ道具ぐらいにしか考えていないのだろう。

 ボクシング協会の会長である原田氏が今回試合前に協栄ジムに対しなんらかの処置を取っていれば、これだけ世間を騒がす様な大問題には発展しなかったはずだ。

 試合後「今回は良い経験になったはずだ」とのそのコメントからは自らの職責に対する自覚が全く感じられなかった。

 よってボクシング協会の会長である原田氏の責任は甚大だ。

 どんな理念を持った政権でも長期化すれば必ず腐敗する。

 政界財界と、その地位にいつまでもしがみ付く老人の醜悪さを幾度と無く目にして来たが、原田氏は元ボクサーらしく散り際を綺麗にしてもらいたい。

 原田氏は今回の一連の騒動の責任を取る為、そしてボクシング界の未来の為にも潔く勇退すべきだ。

 
  私が歴史上の人物で最も尊敬する人は、今村均陸軍大将だ。

 詳しくは角田房子著「責任 ラバウルの将軍今村均」を読んで頂ければよくわかるが、この本を読むたびこんな凄い日本人がいたのか・・・・・と驚きと感動に包まれる。

 終戦後今村大将は今の平和な時代からは想像もつかない様な責任の取り方をして生きて行く・・・・・・。

 今回の一連の騒動で自らはなんの責任も取ろうとしない軽薄で厚顔無恥な大人たちを見るにつけ、深いため息が出ると同時に、今の日本に今村大将の様な人がいれば・・・・・・と、思わずにはいられない。




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●池田高雄(いけだたかお)
昭和44年宮崎生まれ。平成元年プロデビュー。リングネームは憧れのボクサー高橋ナオト氏にあやかり池田タカオ。B級、A級各トーナメントを制し95年にクリス・サギドの持つ東洋タイトルに挑むも判定負け。同年引退。3年半後にメキシコに渡り紆余曲折を経て妻を連れタイへ。タカオ・チュワタナの名で1年間に9戦し、2001年空位のPABA王座を後のWBAスーパーバンタム級王者のソムサックと争い7ラウンドTKO負けを喫し完全引退。元日本、東洋、タイ、ともに1位。

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