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先日私が19才から26才まで所属していた金子ジムのOB会があった。移籍問題でジム側と揉めた事のある私は招かれざる客なのではないかと思い、出席を辞退した。
しかし同期で幹事役を務める西岡氏から「現会長の健太郎氏が池田はいろいろあったから出席しにくいだろうなぁと語ってた旨を聞き、だから気兼ねなく顔を出せばいいとの助言に心が揺れた。
そして散々悩んで出席を決めた。
仕事を終えその足で我が青春の地、下北沢に向かった。
会場を見つけ階段を上がりガラス越しに店内を覗くと誰かがまじめな話をしているらしくみんな神妙な面持ちで静まりかえっている。今中に入ると必要以上に目立ってしまう。
私は階段を静かに降りしばらく下北沢の街を散策する事にした。
あらためて眺める下北沢の街並みは10年前とほとんど変わらない。
狭い路地に雑多な店が所狭しと立ち並び道行く人たちは皆若く華やいでいる。
相変わらず混んでいる小さなパン屋、ひっそりとたたずむ古本屋、練習後に足を運んだ定食屋、みんな昔のままだ。
そう言えば妻ともこの街で知り合った。
じっくりと感慨に耽りたかったが人の波がそうさせてくれそうになかった。
OB会に出席しているはずの写心家山口に電話してみた。
「今入れそうな雰囲気?」
「大丈夫です。早く来て下さい。」
再び階段を上がりドアを開けた。懐かしい顔が並んでいる。
現会長の健太郎氏が「おお池田〜よく来た」と言って笑顔で迎えてくれた。事情を知る先輩たちがみんな一様に「よしよく来た!」と肩を叩いてくれた。
そして現マネージャーで私のトレーナーを務めてくれた賢司氏が笑顔で両手を差し出して来てくれた。私の中にあったわだかまりはもうどこかに行ってしまったようだ。
金子繁治名誉会長に「会長、大変ご無沙汰しております」と挨拶すると目を丸くして「もっと早くこなくちゃダメだよ〜」と言って一層目を丸くして笑った。懐かしい笑顔だった。
あの時のいざこざはもう遠い昔話しになったようだ。
10年以上会ってない人たちが何人もいる。すでに40才を過ぎた先輩たちは今でも私に畏敬の念を抱かせる。
30才を過ぎた後輩たちは今でもかわいい。
日頃の単調ながら時間に追われた生活を送る中でともすれば自分がボクサーだった事すら忘れてしまいそうになる。
お互い殴り殴られ青かったあの時代を共有した仲間達と語り合いながら自分の存在を確認しあう。
俺達は間違いなくあのリングで全てをさらけ出して闘った。
誰に気を使うわけでもなく無理に笑顔を作る必要もなく生活の為に仕方なくやるわけでもなく、ただ己の夢の為にあのリングで文字通り無我夢中で闘った。
俺達は間違いなくボクサーだった。
私は誇りを取り戻し10年来のわだかまりを捨てた。それは自分との和解だったかもしれない。
「昔ボクシングをやっていた」
その何の変哲もない言葉は元ボクサー達にとって勲章以外の何物でもない。
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