名古屋城、落城す。

石原英康君の世界戦を応援に名古屋に行ってきた。
石原君とは6年前にメキシコでエリックモラレスのキャンプに一緒に参加して以来の仲だ。

 1年前の世界戦、カスティーリョに逆転KO負けを喫した翌日「応援してもらったのに勝てなくてすみません」とわざわざメールを送ってくれる心優しい律儀なナイスガイだ。

 今回リングに上がった時から必要以上に力がはいっていた。
パンチにもスピードが感じられない。どうしても勝たなければいけない、そんな思いが痛々しい程伝わってくる。

カスティーリョは石原君のそんな思いを軽快なステップでかわし
フックとアッパーを上下に自在に打ち込む。

中盤には石原君の右目は完全に塞がった。
それでも右手を伸ばし相手を探す。渾身の力を込めた左ストレートはむなしく空を切る。その度に会場から重いため息がもれた。

最終回のインターバル中、会場から石原コールが巻き起こる。
最終ラウンド開始のゴングが鳴ると石原君は満面の笑みを浮かべてイスを立ちそして遮二無二向かって行った・・・。

石原君の長く苦しい闘いの終わりを告げるゴングが鳴った。

友人としての目から見るとひょっとしたら・・・と思わせたがジャッジはひどく公正だった。

試合後の控え室。記者からこう聞かれていた「なぜ最終回にあんなに笑顔だったのか?」と。

彼はこう答えた「お前のおかげで俺は一年間頑張ってこれた。お前のおかげでここまで強くなれた。そう思ったら感謝の気持ちが沸き起こってきた。そしてその思いをぶつけた」と。

最後に女性記者が1才になる娘さんの事を聞いた。その瞬間今まで気丈に語っていた石原君の口から「うっ」と言葉にならない声がもれた。そしてつぶれた目にきれいな涙がにじんだ・・・。

俺も、泣いていた。



■ 池田高雄拳跡集 ■ Back Number

最新の「池田高雄拳跡集」
06.01
05.12 鎮魂歌
05.11-3 血の系譜
05.11-2 戦士の誇り
05.11-1 44歳の勝利
05.10 10年目の和解
05.07 鳥海VSクマントン
05.06 名古屋城、落城す。

●池田高雄(いけだたかお)
昭和44年宮崎生まれ。平成元年プロデビュー。リングネームは憧れのボクサー高橋ナオト氏にあやかり池田タカオ。B級、A級各トーナメントを制し95年にクリス・サギドの持つ東洋タイトルに挑むも判定負け。同年引退。3年半後にメキシコに渡り紆余曲折を経て妻を連れタイへ。タカオ・チュワタナの名で1年間に9戦し、2001年空位のPABA王座を現WBAスーパーバンタム級1位のソムサックと争い7ラウンドTKO負けを喫し完全引退。元日本、東洋、タイ、ともに1位。

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