林隆治のこの人と真剣勝負! 第7回 MAOMIE編 4

ゲスト MAOMIE氏(本名・石川雅之氏)
インターネットサイト「MAOMIEの拳闘天国」主宰)
写真 菊坂尚冬
ホスト・構成 林 隆治


私も含めてボクシング界は「ファンサービス」という概念に、とても疎いものです。試合の終了時間、パンフレット、抽選会…、確かにほんのちょっとした工夫で、ファンを喜ばすことが出来るものなんですね。それこそ好カードを組む、なんてことよりもっと簡単に…。(林隆治)



「キーワードはバリアフリー」(MAOMIE)


MAOMIE(以下・M) ファンから業界への提言は他にもいろいろあるんですが、その一つのキーワードは「バリアフリー」ということだと思うんです。障害を持った人や高齢者のために道路や建物の段差をなくしていこうなどという動きがありますよね。それと同じことです。女性や子供が安心して入場できる試合会場にして欲しいです。コアなファンだけでなく、誰もが気軽に抵抗なくボクシングを見に来られる環境作りね。後楽園ホールの入口近くで、ファンがタバコを吸ってたむろしていたりする光景を目にしますが、あれは是非改善してもらいたい。後楽園の売店と男子トイレとの間の階段の上がり口ね。あれでは女性や子供が入りにくいですよ。

林 スポーツの隆盛って女性が鍵を握ることが多いですからね。

M そうなんですよ。女性を掴んでおかないとね。昔は赤鉛筆を耳に挟んだオヤジの専売特許だった競馬場に、今は女性や家族連れが増えましたよね。あれはJRAの努力があったと思うんです。それから小中学生ね。親が安心して子供たちを後楽園に出せるような環境を作り出す必要があります。それには試合の終了時間が遅いのも問題ですね。

林 それについてはスポーツ紙の記者の方にも言われるんですよ。もっと早く終わればもう少し記事は大きくできるらしいんです。10時に終わるようじゃ、もうスペースが他のニュースに取られてしまう。

M そういう側面もあるんですね。それは知らなかったなあ。でも遠くから来た人にとっては、帰りの時間は本当に気になりますよね。この前の榎対大之伸戦のときなんか、私の隣に座っている人が途中で帰りの時間を気にし始めて、最終ラウンドの前に帰ってしまいましたよ。

林 それはもったいない!あの試合の最後を見ることができないなんて、何のためにチケットを買ってきたのか、という話ですよね。確かに土・日はもう少し早くしてもいいかも知れませんね。

M そうですよね。4時くらいに始めて8時には全部終わらせるとかね。野球は時間が読めませんが、ボクシングの場合は基本的に時間が分かっているはずですからね。それが何であんなに遅くなるのか不思議です。

林 せめて1時間早めれば、少なくとも静岡近辺の人は全然違いますよね。

M そう。それが遠方のファンにとってのバリアフリーだと思うんです。あと、8時に終われば熱戦を肴に、水道橋近辺で一杯呑むこともできるんですよ。そういう楽しみもボクシング観戦にはあるはずなんですが、10時過ぎまでやられてしまうと、ちょっとね。私なんかそれが楽しみですから(笑)。例えば予備カードを組んで、メインを先にやるとかね。そういう方法もありますよね。予備カードに回された選手が気の毒だという人がいるでしょうが、高価なチケットを買ったのに一番いいところを見ずに帰るファンはもっと気の毒です。選手はお金をもらってますが、ファンはお金を払ってるわけですからね。そこを見失ってはいけませんね。

林 まったくそうですね。

M それからファンサービスという観点から言えば、試合と試合の合間の休憩時間に、ちょっとした抽選会みたいなことができないのかなと思いますね。チケットの隅に記されている番号を使ったりすれば簡単にできそうですが・・・。それだけで充分なファンサービスになると思うんです。

林 上滝ジムさんが似たようなことをやっていますよね。勝者当てクイズで正解者にはタイ旅行をプレゼントしています。

M そんなに高価なものでなくても、例えば人気選手が使い古したグラブとかヘッドギヤでもいいんですよ。それにサインを入れてね。ファンはそういうのが一番喜ぶんですよ。人気選手に協力してもらえば、協会全体でファンサービスに取り組んでいるという一体感も出るじゃないですか。ファンの目にもそのように映るはずですよ。お金もかからないし、いいことづくめだと思いますね。

林 それはいいアイデアですね。

M 当選者はリング上に上げてもらって、人気選手から直接賞品を渡してもらって会場からの拍手を浴びたら、いい思い出になるでしょう。それだけでもうれしくて舞い上がっちゃうかも知れませんよ。私なんか,サイン入りグラブを枕元に置いたら、眠れなくなっちゃう(笑)。高価なものを用意しようとすると長続きしないと思いますね。難しいことを考えずに、ちょっとした工夫でいいんですよ。そういうところから改革の手をつけませんか?というのが私の主張です。

林 ファンの喜びそうなことを地道に、ということですね。

「もっと子供を会場に入れるべき」(MAOMIE)

M あとパンフレット。入口のモギリのお兄さんが配っているヤツね。あれ、もうちょっと工夫してもいいんじゃないかと思います。

林 それは私も耳が痛い(笑)。忙しさにかまけて流れ作業になってきて、工夫しなくなってしまうんですよね(笑)。

M 正直言って、もらってもつまらない(笑)。後援者らしき議員さんの硬い挨拶文や広告ばかりで、肝心の試合予想とか見どころについては、ほとんどなかったりするのもありますね。

林 草加有沢ジムさんのパンフレットは評判いいですね。

M あそこは選手のコメントを載せたり、いいものを作ってますね。

林 選手の過去3試合の結果を掲載したりして、工夫のあとが伺えます。

M そういうのを作るのって感性の問題なんですよ。でも、いい感性している人は周囲に結構いると思いますよ。そういう人をうまく活用しなきゃ。好きな人だったら喜んで手伝うと思いますよ。とにかく「変えよう」という意識を持たなければ。その気持ちが大事だと思うなあ。

林 改めて耳が痛いです(笑)。頑張ります。

M 勝手なことばかり言ってごめんなさい(笑)。林さんを責めてるわけじゃないですから(笑)。それと要望したいのは、空席を埋める努力というのも考えてもらいたいですね。

林 確かに会場の雰囲気というか空気というのは大切ですよね。

M そうそう。ガラガラだと見た目にもよくないです。

林 いい試合と思えるかどうかは、観客自身のアドレナリンも大きく左右するでしょうからね。それによって選手のやる気にも影響を与えるでしょう。

M 満杯の観客がガーッと盛り上がると、それだけで試合も盛り上がるんです。だから、チケットが余ったりしたら、タダでもいいから配った方がいいと思いますよ。それも小中学生に上げるのがいい。私も子供の頃からボクシングを見ているからそう思うのですが、小中学生をもっと会場に入れるべきです。大人にばら撒くよりも未来のボクシングマニアになる可能性のある子供にばら撒いた方が、効果的だと思うなあ。

林 東日本ボクシング協会の金子事務局長も、例えば学校の社会科見学の一環として、一クラス分の児童をボクシングの試合に招待するという、アイデアを語っていました。

M それはいいアイデアですね!協会で地方の高校の修学旅行を誘致するとかね。アイデアはいくらでも出てきますよ。以前私は自動車会社に勤務していましたが、学校単位での工場見学を積極的に受け入れていました。子供の頃からモノ作りに対する認識を持ってもらうという意味もありますね。工場内を歩いていると、先生に引率された子供たちの一群とすれ違いましたよ。そういうことも考えると、先ほどの話に戻るけど、やはり試合の時間を早くしないといけませんね。そうなるとこれも先ほど言ったように、入り口でタバコを吸ってたむろしているのも改善しないと子供たちを呼べなくなりますねえ。

林 なるほど。他にはどうでしょう。

M 昨年私のサイトでも話題になりましたが、同じ日に違う場所で好カードをぶつけないで欲しいですね。これはホントに業界内で議論して、対策を練って欲しいんです。誰の試合かは忘れましたが、横浜だったか世界戦と後楽園の好カードがバッティングしたことがありましたよね。共食いしてどうすんの?と思いますよ。一致団結して盛り上げなければいけないときに、足を引っ張り合ってどうすんだよと思いますね。興行主が違うからそれぞれの事情があるとは思いますが、お互いに話し合って何とか調整できないでしょうか。

林 うーん、後楽園ホールの枠は1年も前から決まってしまっているし、それに向けて主催ジムは準備を進めてしまっている。それに対し、世界戦はテレビ局の都合で後から日程が決まりますからね。テレビの編成に対してボクシング界は、ほとんど発言力はない状況ですから(笑)。でも、これはファンだけでなく私たち業者にとっても、頭の痛い問題なんです。客が分散してしまっていいことは何一つないですからね。こういう事態が起こらないように、何とか知恵を絞っていければと思います。貴重なご意見、有難うございます。

(以下次号)




石川雅之氏 プロフィール
1954年,東京都出身。早稲田大学理工学部卒業後,某自動車メーカーの生産現場で積んだ経験を生かし,2004年6月より大手切削工具メーカーに勤務。本業は切削加工技術のエンジニア。出版,講演,専門誌への執筆等の豊富な経験を持つ。幼少時よりボクシングに親しむ。本業の傍ら,2003年7月よりインターネットサイト『MAOMIEの拳闘天国』を主宰。ボクシング以外にも登山,カヌー,スキー,釣り,動物飼育など多彩な趣味の顔を持つ自称”アウトドアの達人”である。


マネージャーというお仕事 By 林 隆治 ■Back Number
・2005 この人と真剣勝負! 第7回 MAOMIE編 4
この人と真剣勝負! 第7回 MAOMIE編 3
この人と真剣勝負! 第7回 MAOMIE編 2
この人と真剣勝負! 第7回 MAOMIE編 1

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●林 隆治
1975年東京都出身。
現在、ヨネクラボクシングジムマネージャー。

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