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チャンピオンカーニバルについて議論を始めました。ここで二人の意見は完全に一致し、すっかり意気投合。しかし、世界挑戦資格検討委員会をテーマにして、初めて私たちは意見を衝突させたのでした。私は業者として、あまりに現実的でつまらない意見を言っているのかもしれません。ファンの方々の心情を、いかに私たちサイドがシステム化できるのか・・・。簡単そうで、難しい、本当に考えさせられる対談となりました。(林隆治)

「カーニバルをファン投票でやっては?」(林)
「それはいい。市場調査にもなる」(MAOMIE)
MAOMIE(以下・M) チャンピオンカーニバルの話になりますが、挑戦者の資格を世界ランカー優先にする必要があるのかなと疑問に思います。
林 1月の榎―金井戦を実現するために、来年のカーニバルは2月から始めることになったんですね(勝者は4月にカーニバル試合として、武本選手の挑戦を受ける)。こんな複雑な特例を設けたりして、カーニバルの趣旨とは一体何なのか、考えてしまいます。
M どういう経緯があったのかは知らないですが、榎−金井戦が実現したのは快挙ですよ。現時点で、ファンが本当に望んでいるのは榎−金井の方ですからね。ただし無理があるルールを作るから、特例を設けようとする動きが出る。だから余計わかりにくくなるという悪循環が生まれるんですよね。
林 実は私は心の中で考えているのですが、指名試合というものは、そもそもコミッションのルールにあるわけですから、協会の行事であるカーニバルは、まったく違う形でやるべきではないかと思うんです。今のままだと、指名試合が単にもう1回増えるだけですから。だったら、挑戦者をファン投票で選ぶ、という形でやったら面白いんじゃないでしょうか。
M それは同感です。私が主張している「必然的にライバル同士が戦わざるを得ない仕組み」って、そういうことなんですよ。チャンピオンカーニバルと指名試合は分けて考えるべきですね。挑戦者をファン投票で選ぶというのはぜひ実現して欲しい!ファンとしては、チャンピオンカーニバルは、見たい試合を見たいんです。それに、ファンが参加できる行事なんてほとんどないじゃないですか。こういうところで、投票という形でファンが参加できればと思います。
林 ファン投票だけだと組織票が心配ですから、ライター投票と組み合わせた方がいいかもしれないですね。
M ファン代表とライター代表の数人で投票する形にしてもいいですよね。
林 そうですね。挑戦者を投票で決定することによって、興行を行なうチャンピオンジムも儲かると思いますよ。なんと言っても、ファンが見たい、と言って選んだカードなんですから、客は入るに決まっている。
M 主催者サイドにしてみれば、市場調査していることと同じ意味になりますよね。どういうカードを組めば儲かるか、タダでリサーチできてしまうんだから、こんな良いことはないと思います。
林 今の形態のカーニバルだったら、この方がいい。やろうと思えば簡単に実現できると思います。
M 実現できない話ではないですよね。
林 はい。何度も言うように、せっかく協会が自発的に行なう行事なのだから、コミッションの指名試合とは違う形にしないと。MAOMIEさんも、御自分のサイトの「前向きに拳闘します」などで、この案が実現するように煽ってくださいよ(笑)。
M 先ほども言いましたが(前回参照)、ファン有志による諮問委員会のようなものを作っても良いのではないか、と思います。私の掲示板にも、良い感性を持っている人がたくさん集まっていますよ。そういう方々に入ってもらって、業界やコミッションに提案するのもいいですね。今、ところどころで話題になっている世界挑戦資格についても、しっかりした機関で客観的に審議されるべきだと思いますね。世界戦というのは、ファンからすれば、選ばれた者が戦う場であって欲しいんです。それくらいの厳しさを持って欲しいというよりも、それは当然なんですよ。一生懸命頑張っているから最後に挑戦させたいとか言うのは違うと思うんです。卒業旅行じゃないんだから(笑)。
林 むむ…。頑張った選手にはぜひ世界の舞台に立たせたい…、というのは私たちの正直な気持ちですね(笑)。
M 手塩にかけた愛弟子を世界の舞台に立たせたいという指導者としての気持ちは痛いほど理解できますが、一生懸命やったけど力が及ばなくて、結果的に世界に挑戦できなかった。それは当たり前だと思うんですよ。甲子園や箱根を目指していたのに涙を飲んだとか、学力が足りなくて志望校に入れなかったとか、世の中にはそんな話はいくらでもありますよ。実力が伴わなければチャレンジするチャンスさえ与えられないなんてことは当たり前。実力があるのに運に恵まれない人はいますけど、その逆はダメですよ。今のプロボクシング界はそこの部分が甘いと思いますね。ボクシングでも挑戦するのに関門を設けないとまずいと思います。そのためにも世界挑戦資格検討委員会というようなものを作るべきです。
林 それには、日本ボクシング界そのものの構造から考えなければならないと思うんです。ボクシング界を相撲協会のように、協会の力を強くして一つのまとまりにするのか。それとも、アメリカのボクシング界のように、プロモーターをそれぞれ独立した存在とみなして、ビジネスは自由主義だとして各々に任せるのか。今は後者の立場を取っていますね。というより、プロボクシングにおいては前者のような形態を取っている国は、現在のところ皆無です。ボクシングの試合はマネージャーやプロモーターの自由な交渉の中で作られていくわけです。その中で、日本だけ協会が一括してボクシング界を束ねて、世界挑戦資格にハードルを与えたりするということが、現実的にうまく機能するのかどうか。私は大いに疑問ですね。
無謀な挑戦はビジネスの論理で淘汰される(林)
有識者の客観的判断で制限されるべき(MAOMIE)
M 日本とアメリカのスポーツビジネスを対等に捉えるのはちょっと疑問ですね。将来はわかりませんが、現時点の日本ではビジネスとしてのスポーツが成熟しているとは思えません。アメリカと比較してしまえば、はっきり言って未熟ですよね。だからこそ協会やコミッションが強くなって、統括する必要があるし、それが現時点の日本の市場にマッチしたやり方だと思いますね。そこを見誤ってアメリカの物真似をすれば必ず失敗しますよ。もっと日本の現実を見ないとね。特に世界挑戦に関してはある程度の自主規制をしないと秩序がなくなってしまう。
林 私は、無謀な挑戦は、ビジネスの論理である程度ふるいにかけられていくと考えます。不人気な世界戦にはテレビ局もつかず、商売にならない。だとしたら、どうしようもない挑戦は自然に減っていきますよ。
M ニワトリと卵の話みたいになってきちゃった(笑)。でも今の林さんの意見には賛成しかねますねえ。そんな悠長なことを言っていたら、ボクシング界そのものが沈没する恐れだってあります。
林 沈没したほうがいいのかも知れません(笑)。今はもう沈みかけているところですが、必ずしもそれは悪いことではない、と思うんです。おかげで最近、好カードが増えてきたじゃないですか(笑)
M 確かにここのところ急に増えてきましたね。それは非常に良い傾向です。
林 そう、それがビジネスの論理ですよ。昨今、世界戦を組むのが段々と厳しくなってきている、というのが現実なんです。例えば、うちの嶋田にしろ長嶋選手にしろ、それぞれが別々に世界挑戦できているのだったら、とうにしていますよ。でもチャンピオンは本場で活躍しているから日本では手が届かないし、テレビ局も放映権料を出してくれない。だからお互いが市場の論理に追い込まれて、長嶋―嶋田戦は実現したわけです。追い込まれれば、我々だって食うために好カードを作っていきますよ。そして人気が再燃したらまた世界戦が多く組まれる。この繰り返しなんだと私は思いますね。
M それでも、なんでこんな選手が?というあまりにもひどい挑戦が多いように感じます。私が主張しているのはそこ。誰が見ても「ハアッ?」と疑問を感じる世界戦くらいは「最低限度の自主規制」をかけるべきだと言っているんです。何でも反対と言っているわけではないんですよ。そこを誤解しないで欲しいんです。
林 なるほど。それはわかります。そういう意味で言うと、地方のほうが東洋とか世界を組むのに積極的ですね。関東などは土地柄がビジネスライクでシビアですが、地方に行くと団結心があって、スポンサーもポンとお金を出してくれますからね。「地元から世界チャンピオンを」とか言って。
M だからこそ、検討委員会が必要なんですよ。同窓会とか個人の後援会が選手を応援するのは良いことですが、カンパで挑戦のための資金を出して贔屓の選手を世界に挑戦させようなんてことはやってはいけない。そこは一線を引くべきですよ。そんなことをやっていては、ファンにそっぽを向かれてボクシングそのものの存在が危ういものになります。その部分に関しては中立な立場の検討委員会で有識者が客観的にしっかりと判断すべきです。
林 うーん、理念は分かるんですが・・・。実際にはやはり難しいと思うんです。例えば、その検討委員会の言うことを聞かないジムがあったらどうすればいいのかという問題があります。罰則とかを設けるんでしょうか。
M 世界戦のリング上で毎度呪文のように繰り返されるコミッショナー宣言、あれは何のため?あの文言、私が子供の頃から全然変わってない(笑)。日本国憲法の前文は暗記できないのに、あれは暗記しちゃってる(笑)。「・・・規定どおり厳重なる身体検査と計量を行い、幸いにして両選手ともにすべてが適格でありましたので、私はこの試合を・・・」なあんてね(笑)。ああやって宣言するっていうことは、健康状態やウェイトだけでなくて実力的にも適格だと判断したわけでしょ?それでは何を根拠に適格だと判断したのかなって疑問に思うわけ。横綱審議委員会みたいな位置付けの検討委員会の許可がなければ、コミッションがその試合を認定しないというルールが必要じゃないかなあ。
林 それは無理だと思いますね。JBCは決められた試合を認定・運営する機関ですから、そこまでマッチメークに踏み込んだ縛りは、越権行為になってしまいます。やるとしたら、あくまでも協会の自主規制という形でやるしかないでしょう。
M もちろん検討委員会は自主規制のために、コミッションの外部に作るべきだと思っています。コミッションに認定申請をする前の自主規制ですね。それは理解しています。
林 結局こういった問題は、日本国内だけで規制しても仕方なくて、世界の統括団体が率先して規制を作るべきだと思います。例えば東洋を何度防衛しなければ世界ランクに入れない、とか。今のままだと、世界ランクに入ってしまった以上は、挑戦の正当性はどうしようもなく動かしがたいですからね。あと、業者の勝手な言い分ですが、批判を浴びる中で世界挑戦させて、それで勝たせるのも醍醐味だったりするんですよ(笑)。
M 業界の新しい旗手となるべき林さんが保守派に回っては困りますねえ(笑)。誤解を避けるために言いますが、私は世界挑戦資格検討委員会なんて本来はない方がいいと思っていますよ。どう考えても、そんなもの、ない方がいいに決まっています。そういうものがなくてもアメリカのボクシング界のように、実力本位で世界挑戦が決まり、ファンが見たいと思うカードがビジネス優先でどんどん実現するようなら何の苦労もないです。日本のボクシング界がそこまで成熟していないから、再三言っている世界挑戦資格検討委員会や「必然的にライバル同士が戦わざるを得ない仕組み」なんていうものが必要だと考えるわけです。そこを理解して欲しいんです。そうしないと成熟する前に消滅してしまうんじゃないかと、それを非常に心配しているわけです。成熟するのに要する時間の長さと没落するのに要する時間の短さを考えると本当に心配です。やはりボクシング、大好きですから、長く続いて欲しいし・・・。愛するがゆえ故ってところですね。
林 おっしゃることは充分にわかります。私は選手育成の現場にいる者としての本音をぶつけてしまいましたが、もともとは一ファンだったわけですから、ファンの方々の心情は理解しているつもりです。よそのジムの選手が世界挑戦決まると「なんで、こんな選手が」って完全にファンの視点で思ってしまうこともありますもん(笑)。ですから、今日MAOMIEさんに言われたことは、これからも肝に銘じていきたいと思います。貴重なご意見、ありがとうございます。
(以下次号)
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