| 元東洋太平洋バンタム級チャンピオン Text By 新田 渉世 Photo By 山口裕朗 |
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| 宮田ジム 伊藤洋幸トレーナー |
| 「もしボクシング以上のモノに出会えたなら、誰もカムバックはしないでしょう・・・」 野口ジムの横井龍一トレーナーから紹介された今回の"戦士"は、宮田ジムの伊藤洋幸トレーナー32歳。一度現役を引退したものの、トレーナーを務めながらカムバックしてリングに上がり続けた変り種である。 宮田ジムの伊藤トレーナー???失礼ながら名前を聞いた時点では、誰のことやらさっぱり分からなかった。宮田ジムのホームページを覗いて見ると、スタッフ紹介のページに"伊藤洋幸先生"の顔写真が載っていたが、どうも見覚えのある顔ではなかった。 年末に風邪をひいて寝込んでしまい、完治しないまま迎えたお正月明けのある日曜の夜、我々は上野駅中央改札前の丸井正面玄関で待ち合わせた。トラッシュ中沼の世界戦ポスターを手がけるなど、最近活躍の場を広げているフォトグラファ山口が先に到着して伊藤氏と談笑していた。 「ああ、伊藤さん!知ってる、知ってる!!」 伊藤氏の顔を見た私は思わず叫んでしまった。坊主頭のその顔は、後楽園でもよく見かけるお馴染みの顔だった。ホームページのスタッフ紹介の写真では、髪の毛がしっかり生えていてまるで別人のようだった為、ピンと来なかったのだ。 1986年7月、浜田剛史(帝拳)対レネ・アルレドンド(メキシコ)の世界戦が、浜田の1RKO勝利で終ってしまい、余った時間に放映された「大場政夫特集」に感動してプロボクサーを志した伊藤少年は、日大入学とともに滋賀から上京し、大学2年の時に宮田ジムに入会した。 「ある日本タイトル戦を後楽園ホールへ見に行った時、エレベーターに偶然乗り合わせた宮田会長を拝見して好印象を持ったんです。この人のところでやりたいと感じました。」 1993年、大学4年の時にプロデビューし、並行して一般の会社に就職した。 「ボクシングが出来る条件の会社を選んで就職したんですけどね、勝ったり負けたりしてて肩身がだんだん狭くなっちゃいました。」 1995年の東日本新人王予選で引き分け(相手の勝者扱い)、伊藤氏は一度リングを去った。そして1998年に宮田会長から声をかけられ、会社を辞めて宮田ジム専属トレーナーに就任。再びボクシングの世界に戻ってきた。ここまではよくある話なのだが、伊藤氏の場合は更に、再びプロテストを受験し、トレーナーを務めながらカムバックを果たしてしまったのだ。 カムバック戦をKO勝利で飾り、B級トーナメント予選に出場すると、連戦連勝でついに決勝まで駒をすすめてしまった。決勝では何と、自らの教え子と戦うことになってしまい、苦渋の決断の末、伊藤氏は身を引いて教え子に花を持たせた。そして今度こそ本当に現役を引退した。 「トレーナーやりながらの再起は正直きつかったですね。でもオレが頑張ってるのを見て、お前らも頑張れっていう思いでやってました。やるだけのことはやりました。」 ![]() ![]() 毎回恒例だが、私生活のことも突っ込んで聞いてみた― 「結婚の予定はなし!」 正月に田舎に帰って両親から説教を食らった伊藤先生。 「そうそう、ネコと同居してます。携帯の壁紙も、年賀状もみ〜んなネコちゃん!」 無類のネコ好きという伊藤先生だが、そろそろ年齢的にもネコではなくお嫁さんのことも考えた方が・・・って、余計なお世話でした。 「実はボク、現役時代からの淡い夢があるんです。」 そう切り出した伊藤氏は、トツトツと自分の夢を語り出した。 「ボクシングで金を貯めて、その金で何かビジネスをやりたいって夢があったんですよ。」 法学部、経営法学課を卒業している伊藤氏は、経営コンサルタントの勉強にも励んでいるというから、結構本格的かもしれない。 「でもやっぱりボクシングだけは死ぬまで関わりたいですね!」 と、ボクシングの話になるとやはりテンションが1ランクアップする。 「あいさつは基本ですよ。出来ないヤツは強くならない。選手は基本的に我がままなんですよ。後はトレーナーがどれだけ我慢するかにかかっている。ホントにトレーナーは面白い仕事です。人間対人間の仕事ですからね。奥が深いです。ボクは天職だと思っています・・・。」まくし立てるようにトレーナーとしての持論を披露すると、一呼吸おいてこう付け足した。 「月並みですけど、トレーナーとしてはやはり・・・まず日本チャンピオンを育てたいですね。」 彼の言う通り、おそらく死ぬまで彼はボクシングと関わっていくのだろう。 対談の2日後、伊藤氏から携帯にメールが届いた。 「新田会長のコラムを他にもいろいろ読ませて頂きました。とても刺激になりました。正直このところテンションが少し落ちていたのですが、これを読んで僕自身励みになった次第です・・・云々。」 トレーナーとしての持論を披露した時、テンションが1ランクアップしたように感じたが、本来はそんなもんじゃなかったのだろう。私のコラムが、本来のテンションを取り戻すのに少しでも役立てば、これに勝る喜びはない。 「風邪どうでしょうか?体調にはくれぐれも気をつけて頑張って下さい。」 せっかくありがたいお言葉を頂いたが、未だに咳き込みながらこの原稿を書いている。今年の風邪は長引くぞ・・・ |

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