「愛すべきラスベガス」
プロとアマの共存 Text Photo By 篠田誠司



プロスポーツの繁栄を考える時、アマチュアとの共存を抜きにしては考えられないのですが、日本ボクシング界に限って見てみると、あまりにも双方の考え方が異なり、協調性に欠けているのが明らかです。私には、あたかも日本アマチュアボクシング連盟がプロに敵対心を持っているとすら思えるのです。その問題が双方のレベル促進、そして普及に悪影響を与えている事は誰もが認める事実ではないでしょうか。

 その確固たる例が、石川県の高校生ボクサーが、アマチュアボクシング連盟登録抹消処分になった件です。この件はご存知のとうり、以前プロの興行でスパーリングをしたという理由で、アマチュアの試合に出場できなくなったボクサーの事なのですが、この処分に対して誰もが首をかしげたのではないでしょうか。他のスポーツを見てみると、一度プロになった選手がアマに戻る事ができない事はあっても、一度もプロになった事がない選手が同じ理由で登録抹消になった件は聞いた事がありません。この高校生ボクサーはプロのライセンスを所得していたわけでもなく、報酬すら受け取っていません。しかも、今までにも同じような形でプロの興行に参加した選手が多くいるにも関わらず、前触れもなくこのような処置を取った事に関して疑問に思います。もし、アマチュア連盟がこの様な規制を設けたいのであれば、事前に発表し、注意を促すのが筋ではないでしょうか。この出来事以来、アマチュア連盟への不信感が増し、プロとの亀裂が大きくなった気がします。

 プロが存在する競技の背景には、プロを目指すアマの選手が存在し、プロの選手が栄える事により、プロに憧れその競技を始めるアマの選手が生まれ、お互いが栄えるという共存共栄の原理が成り立つべきなのですが、日本ボクシング界に限ってはその原理が上手く可動していません。あえて言えば、日本ボクシング界ほどプロとアマが不穏な関係を保っている競技は無いと思います。

 アマチュア連盟の方々がプロとの共存に対しての懸念の一つに、良い人材がプロに流れてしまう危険性を問う人がいるのですが、その仮説は誤りだと断言できるでしょう。アメリカでは、より良い条件でプロ入りするために、アマで優秀な成績をのこす事がもっとも有効な手段になっており、そのためアマのレベルも高く、人材も豊富です。正しく、アマが栄える事によってプロが栄え、プロが栄える事によってアマが栄えている好循環、共存共栄している状態にあるのです。

 一方、日本ボクシング界はどうでしょうか?日本のアマ、そしてプロボクシング界の関係を考える上で、最も不可解な点がこの問題に隠されています。

 日本でプロボクサーを目指す人達は、一様にアマで長く経験する事を拒みます。その理由は、ルールの違いにあります。日本のアマチュアの試合ではバッティングやオープンブローへの注意が異常に厳しいため、戦い方を変えざるをえません。その結果、アマの戦い方ではプロでは通用しないし、逆にプロの戦い方ではアマで通用しないという不可解な現象が起きているのです。その結果、アマチュア経験が全くないプロボクサーが非常に多く、アマにも良い人材が残らないという悪循環になっています。

 アマのルールを見直すべきだと思うもう一つの理由は、アマの日本人ボクサー達が国際大会でまったく通用していないという事実です。日本人ボクサーがオリンピックで金メダルを獲得したのは東京オリンピックでの1つだけで、それ以来オリンピックはもとより、他の国際大会でも金メダルリストは出ていません。この散々たる結果にも関わらず、アマチュア連盟が対策を打って出ない理由は何なのでしょうか?日本で無敵と言われた辻本選手や、三浦選手ですら国際大会では結果を残せていないのです。

 もし、プロとアマが米国の様にルールの差を無くし、お互いに繁栄できる体制を作れば、日本でもプロに転向する前にアマで経験を積んだり、より良い人材がアマでの国際大会やオリンピックを目指してアマで活躍するようになり、双方にとってプラスになるのではないでしょうか。

 現在のような状態では、ジムでアマの選手とプロの選手を指導する時に、まったく違った戦い方を教えなくてはならないので、指導する方々も困惑してしまいます。確かに、アマの試合はプロと比べてラウンド数が少ないので手数中心になるのは仕方がないのですが、その他の点は改善すべきだと思います。実際、アマの国際ルールはプロに近い(日本のようにバッティングやオープンブローに神経質ではない)ので、日本のアマのボクサーが国際大会で勝手が違う思いをする事があると思います。このような問題を無くすためにも、ルールの改善が必要ではないでしょうか。

 本来、プロとは実力のあるハイレベルな選手同士が鎬を削る場であり、ゼロから経験を積む場ではないはずです。それにも関わらず、現在の日本プロボクシング界は、まだ十分な技術がない人まで「プロ」と名乗っている状態なので、この状況を打破するためにもアマと連携して、より多くの人がアマで経験を積み、しっかりとした技術を身につけてからプロに転向するようにし、プロ、アマ双方のレベルを上げていくべきだと思います。


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