Second Wind
Text By Mayumi Kitano




 ボクシングは意外にもメンタル面に負うところの大きいスポーツである。

 という説は、よく耳にする。
 その通りだと思う。
 むしろ、そうでないスポーツはないというのが私の考えだ。

 私自身は体を動かすことが嫌いであり苦手であるので、よほど必要に迫られない限り運動はしない。そんなわけだから、これまできちんと取り組んだスポーツは、仕事の一環としてやらざるを得なかったボウリングだけである。(そう、ボウリングはれっきとしたスポーツなのだ。国体やアジア大会の正式種目であり、世界選手権だってある)

 ボウリングの投球に最も重要なのは、タイミングとコントロールだ。スイングや助走のタイミングが少しでも狂えばボールのスピードや回転が変わり、その結果、レーン上でのボールの動きが全く違ってしまうし、それ以前に、狙った場所に投げられないのではお話にならない。


 運動音痴の私の場合、コントロールミスは日常茶飯事なのだが、調子がいいときでも、端の方のピンが残ったりすると、スペアを狙うときは「しっかり投げなければ」と意識しすぎるために余計な力が入って、失投する確率が高い。大事な場面であるほど、思わぬミスをしてしまうのだ。

 プロやトップレベルのアマチュアの試合でも、ここぞ!という場面でこそミスは起こりやすい。緊張や入れ込みすぎのため、リリースのタイミングが一瞬ズレてしまったり、狙った位置を数センチ(これが命取り)外してしまうのだ。

 たぶん、ほんのちょっと筋肉の協調がうまくいかなかっただけのことだ。予定よりちょっと肩に力が入ったとか、脇が開いてしまったとか、コンマ数秒スピードが遅かったとか速すぎたとか。それが自覚できる場合もあれば、無自覚のこともある。


 的(ピン)がじっと立って待っていてくれるボウリングでさえそうなんだから、相手がいて、お互いに動きながら攻防を繰り返すボクシングにおいては、心理的要因がもたらす結果は何倍も大きいにちがいない。一瞬の迷いやためらい、自分でも気づかないほどの小さな恐怖心のせいで、パンチを出すタイミングや角度、伸びが変わったり、攻守の切り替えが遅れてまともに食らってしまうこともあるだろう。

 選手やジム関係者がよく言う「気持ち」や「ハート」は、十分に試合結果を左右する可能性があるし、場合によってはケガや事故につながることだってあるかもしれない。
 それくらい、精神面の強化は大切なのだ。


 その重要性が認識されているにも関わらず、実際にメンタルトレーニングをしているボクサーはかなり少数派だと思う。ハートの強いヤツが勝つ、弱いヤツが負けるという論理に終わってしまうのがボクシング界の現状だ。

 とはいえ、「メンタルトレーニング」のやり方なんて、個人で習得しようと思っても簡単ではないだろう。それをすべて選手まかせにして「お前はハートが弱いんだよ」のひとことで突き放してしまうのでは、選手が気の毒というものである。

 パンチの打ち方や避け方、筋肉の鍛え方や体重の落とし方だけでなく、ハートを強くする方法も教えられる指導者が、ボクシング界にも必要だと思うのだが、いかがだろうか。

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