☆ なぜ、日本人は遠征試合をしないか
久し振りにタイトルを「マネージャーというお仕事」に戻してみた。今回は、マスコミやファンの「なぜ?」に対して、マネージャーの立場から説明したいことが出てきたからだ。
特に先月の編集長のコメントが、いつか書こう、いつか書こう、と思っていながらつい忘れていたことを、ようやく思い出させてくれた。
そう、なぜ最近の日本人ボクサーは海外で試合をしないのか、という疑問についてである。ワールドボクシングのサイトでも前田編集長がそのことを書いていたし、尾崎恵一さんにも直接「保住や金山はアメリカで修行をさせるべきだ」と言われた。そして我らが編集長の先月の編集後記。
皆さんはおそらく、暗に「日本人は昔より臆病になったから、外に出なくなったのだ」と、その風潮を批判的に見ているのだろう。また「ジムの会長たちが儲け優先主義に走った結果、金にならない遠征を敬遠しているのだ」という論評も時折、見受けられる。
どちらも半分は当たっている。かも知れない。日本がボクシング全盛期だった頃とは違い、連勝記録、無敗記録に重きが置かれている今、マッチメークに慎重になるのは当然だし(これは連載の最初の方に書いたが、私からのマスコミ批判である。一度負けると、とたんに冷たくなる最近のマスコミの責任は重いと思う。昔は勝ったり負けたりを繰り返し、それでも人気選手は紙面を賑わしていた。ガッツ石松さんは世界チャンピオンになるまでに13敗しているのだ!)、リスクが大きくしかも金にならない選択肢を選ぶ経営者はいないと思う。
しかし、最も大きい真の理由は、実は、まったく私たちのサイドにはない。そこを皆さんに分かって欲しいのだ。つまり、私たちが海外に行かないのではなく、海外が日本人を呼んでくれないのである。
私にとってもこれは驚愕の事実であった。ここまで日本人が世界で不人気だとは、正直、自分でマッチメークをするようになるまで気が付かなかった。
特に欧米諸国では、東洋人に、まったく商品価値が認められていない。悲しいがこれは事実である。私は、保住がケビンパーマーに雪辱して一気に世界7位の座を手に入れた時、ドン・キングプロモーターや、アメリカのマッチメーカーに頼んで、アメリカかカナダで試合をさせたいと申し入れたが、全く相手にされなかった。最後は「興行権を渡すから自由に保住を使ってもらってかまわない。8回戦でもいい。」とまで言ったが、答えは「保住をこちらで使うメリットはない」という、非常に素っ気ないものだった。おそらく今、東洋無敵をほぼ証明した佐竹選手も、同じ壁に当たっているのだろう。アメリカ進出とは、言葉で言うほど簡単なことではない。
なぜ欧米諸国は自国で東洋人(特に日本人)を使うのを、それほどまでに嫌がるのか。人種的偏見、経済的要因、実力差の問題など色々考えられるが、テレビ局が大きな発言力を持っていて、その意向に左右されているようである。それ以上は私にも分からない。ただそれは現実なのだ。
必然的に、東洋人は欧米系選手とグローブを交える機会はほとんどない、ということになる。
だったら日本に欧米系世界ランカーを呼んででも、経験を積ますべきだ、という声が聞こえてきそうだが(そして実際、世界挑戦する前に世界ランカーと対決して実力を証明すべきだ、という意見をよく聞くが)、それも難しい。なぜなら欧米系世界ランカーは、ファイトマネーがとてつもなく高く、日本のプロモーターは、それに見合った入場券収入、放映料収入を確保できないのだ。
世界ランカーとの試合は単なるノンタイトルマッチである。強豪と組んだからお客さんが良く入り、テレビ局がギャラを弾んでくれる、なんてことはあり得ない。日本では、なんだかんだ言っても、世界タイトルの権威が最も重んじられており、それがあるのとないのでは、ファンやマスコミの反応がまるで違う。つまり世界チャンピオン並みに強い世界ランカーを、高い金出して日本に呼ぶメリットは何もない、ということだ。だから、世界ランカーとの試合で実力を証明してから世界挑戦、という路線は、ファンが言うほど容易ではないし、また現実的な話でもない。
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この東西の交流の断絶は、ボクシング界に大きな歪みをもたらしているような気がしてならない。最近の世界王座に、暫定制度やスーパーチャンピオンなんていう仕組みが出来たのも、この断絶が底流にあるのだろう。ある期間、東洋圏の選手が世界王座をたらいまわし始めると、業を煮やした欧米の大プロモーターは、統括団体に圧力をかけて別の王座を作らせてしまうし、またその逆のパターンもあって、アメリカのビッグスターが長い間、王座に居座ることになれば、彼をスーパーチャンピオンに祭り上げってしまって、東洋人にチャンスを与えるのだ。
そういったいびつな形で、欧米系と東洋圏を並立させたことで、ますます両者の交わりが困難になってしまっている。
では、どうすれば良いのか。正直言って結論は出ない。また、私一人がああだ、こうだと知恵を絞っても、何がどう変わるという問題でもない。ただその現実を前にして、私なりに何が出来るか、は考えてみようと思う。
金山がデラホーヤと試合をする、なんて事が普通のことになれば良いのだが・・・
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