| 極私的ボクシングの歩き方 その5 | ||
| 「 体の歪み 」 | Text By 中津川 一路 |
| 今回は体の歪みについてお話したいと思います。 少し前の専門誌の記事になりますが、マニー・パッキャオが試合前に突然、背中が痛み出した・・というような記事がありました。特に打撲を負ったわけでも、強烈に体を捻ったりしたわけではなかったようです。 これは体の歪みが試合直前になって、何かの拍子で出たのではないかと推測されます。 「骨盤が歪んでいる」とか、「足の長さが違っている。」とかお聞きになられたことがあると思います。テレビでも骨盤の歪み、体の歪み、について取り上げられているので、理解なさっている方もいるでしょう。改めて簡単に説明しますと、左右、前後に筋肉の柔軟性のアンバランスから起きる捻じれやひずみってことになるでしょうか。 歪みを生じるには大きく分けて二つのパターンがあります。ひとつは体の偏った使い方です。 人間は利き腕というものがあるように、体の使い方の癖でどうしても体は偏ります。その疲労の蓄積により、筋肉が硬直し、それが歪みとして体に出てきます。 もうひとつは怪我などの局所の障害によるものです。 例えば足を捻挫したとします。かばって動いているうちに、身体がそれをカバーしようと自然に右側の骨盤を上げて行きます。背骨は頭を垂直に保とうとして、S字に曲がって行きます。で、歪んでゆく・・・と。
若いうちはそれでも大体平気なのですが、徐々に蓄積した筋疲労は、ある日バーンと表舞台に飛び出します。その頃にはかなり負担があちこちに出ていて、背中が痛い、腰が痛い、頭が痛い・・などと様々な症状が発症します。もう我慢に我慢を重ねていたりすると、局部が既に組織的に痛んでしまっていて、治すことが大変だったりします。おまけに背骨(脊柱)が曲がりますと、脊柱からは様々な神経が出ていますので、自律神経系の症状、頭痛や倦怠感が伴います。そして大抵の場合、ここでお医者さんに言っても、原因不明といわれることが多いです。(腰痛に関しては椎間板ヘルニアといわれることが多いと思われます。メンタル面の問題によることもあり、一概に言い切れませんが、体の歪みによる症状が多いです。腰痛は遺伝性という説もあります。) もうひとつは手足の怪我が体全体に波及するというケースもあります。また歯の噛み合わせが全身に影響を及ぼす・・という話もあります。諸説ありますが、結局のところ、体は歪みやすく、それが原因であちこちに痛みが出るということは、ほぼ確かなようです。 実際に治療していて、右肩、右手に疾患がある人は、右の股関節や腰、膝に問題がある人が多いようです。 骨盤の歪みの簡単なチェック方法は足を組むことです。組みにくい足がある人は片方だけの腰痛、肩こり、膝痛を抱えてませんか? あとは、風呂上りに鏡を見て、左右どちらが下がっているかチェックしてみましょう。首が無意識にどちらかに傾いていたり、肩が下がっていたり、ということかありませんか? ボクサーの人でも腰痛などに悩んでいる人が少なくないと思います。 ボクシングの構えというのは右か左に構えます。バランスをやや前に置く人も後ろに置く人もいますが、どちらにしても構えは左右どちらかの構えです。 それを長い間続けていると歪まない方が不思議です。 また顎を引き、前傾姿勢を強引にする場合は前後にも歪みますので、背筋や腰を痛めることもあります。 それに、若いうちから大切に体を使えばいいのですが、スポーツ選手は怪我をするかどうか、というぎりぎりのラインで練習を積んでいますので、徐々に体は痛んできます。 実際、スポーツ選手の引退の多くの原因に怪我が挙げられます。 ゴルファーも野球選手も練習の何パーセントかは逆の構えで練習するようです。試合でスイッチをしなくても練習の最後に何ラウンドかを、逆のスタンスで行うことで、歪みの予防になると私は思うのですが、いかがでしょうか。 おかしい・・と違和感を感じた段階でストレッチで左右のバランスを整えるようにすると、それだけで症状はけっこう改善されるはずです。普通はストレッチは伸ばす筋肉に集中して行うように言いますが、歪みを矯正するには伸ばした感覚を伝達する感じで行うとよいと思います。例えば腰を捻るストレッチをした場合、捻りを感じた腰の筋肉を背中→首→頭とか脇とかに伝えるのです。ストレッチの強度としては、背伸びをしたときに欠伸がでますが、そのような心地よい感覚がベストだと思います。激しい痛みを感じてしまっては逆効果です。 また、 一つの説として体に負担をかけない方法を紹介したいと思います。巨人の桑田投手が古武術に体の使い方を学んだということでしたが、その方のやり方は体をひねらない、という理論です。捻ると力は発揮できるが、体に負担をかけてしまう・・・というような論旨の記述がありました。(断片的に取り上げてしまうことは申し訳ないのですが)ボクサーは捻ることで力を出す、ということが常識になっているので、そんなことはありえない・・ということをおっしゃる方が大部分だと思います。ただ捻ることによる体・・・肩、腰、手首にかかる負担を考えると一考する価値はあるな、と最近思っています。 次に治療にかかる場合の注意点についてお話したいと思います。巷には様々な治療法が溢れています。整形外科、鍼灸、マッサージ、○○なんとか整体、○×気功、××ストレッチ、さあどれがいいのだろう?と思うでしょうが、整体に関して言えば、はっきりいって看板ほど中味は変わらないと思います。
結局、商標ではなく、治療師個人のセンスと技術の問題ですので、自分でかかってみるか、口コミしか確認方法はありません。 一つ言えるのは、その時はよかったけれど、しばらくすると元通りになってしまって、また通って・・という繰り返しになってしまう・・というのは避けたいところです。 実際、強い力で揉んだり、矯正したりしていると徐々に元に戻りやすくなってくることは確実です。そして治療院に通う費用も馬鹿になりません。(実際、自分はそれでメシを食っているのですが。) やはり自分で自分の体を理解し、観察を続けることが長持ちの秘訣だと思います。 急性的な怪我は治療が効果的ですが、歪みなど慢性から来るものは日々の自己ケアが最も大事になります。良い治療家かどうかは別として、体についてきちんと指針をしめしてくれる人がベターに思います。 中には神様みたいな治療家の人もいて、理屈抜きに触れずに治す・・という人もいるようですが、その人はまあ、特別ということでご容赦下さい。 ついでに骨がなぜ鳴るか、についてお話したいと思います。ストレッチで関節を引き伸ばす限界点を超えると、ポキッと関節が鳴ることがありますね。あれは最近(?)の研究では、関節中で気泡(あわ)がはじける音だとわかってきたそうです。ポキっと鳴ることによって、気泡と共に中の発痛物質が拡散し、気持ちがいいような感覚がするようです。 そして、その関節自体には大きな力がかかります。関節の中というのは神経がありませんので、痛みを感じることはありませんが、関節の内部の軟骨はダメージを受けるようです。その証拠に指を鳴らしていると指関節が膨れて、節くれ立ってきませんか?あれは軟骨が再生する際に関節が盛り上がってくるらしいです。 腰とかでしたら大丈夫かもしれませんが、首などは様々な神経が複雑に入りくんでおり、事故が起きる場合もあります。無理にバキッとやるのはカイロプラクティックのうちの一手技にすぎず、カイロプラティックでもそういう過激な手技は使わない、という人も少なくないようです。 矯正の段階で指一本の力で矯正する、といいます。それで矯正できない場合は何かの理由があるのだから、無理はしない、と。もちろん動かしていった延長上でポキッと鳴るのはかまわないと思いますが、力をこめた矯正はリスクが伴うのは避けられないようです。クリック音(ポキッという音)がしなくても、効果は得られます。 まとめとしましては、左右をバランスよく使い、左右の動きに違和感があったらストレッチで解消し、なるべく体に負担のかからない動きをする、ということになりますでしょうか。 反対意見、異論ございますでしょうが、拙説お見逃しいただければ幸いです。 |