| 元東洋太平洋バンタム級チャンピオン Text By 新田 渉世 Photo By 菊 |
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| ヨネクラジム 林隆治マネージャー |
「マネージャーというお仕事」・・・本サイトのコンテンツのひとつを執筆している林 隆治氏とは、酒を酌み交わす機会も多く、向こうがどう思っているか定かではないが、私にとっては友人のひとりである。 前回の"戦士"ヨネクラジムトレーナー成田城健氏は、この"私の友人"であるヨネクラジムマネージャー林 隆治氏を紹介してくれた。 今回は、フォトグラファ山口が7/18・19に開催される写真展「拳闘人間」の準備に追われて欠席となった為、本サイト編集長に写真担当を依頼した。そして更にライターの丸山幸一氏、白井・具志堅ジムマネージャーの栗田智美氏という親しい面子が集まり、恐れていた通り単なる飲み会となってしまったのである。
しかし以前にも記述している通り、もともと「戦士と語る」は、古今東西の"ボクシング人"との語らいそのものが目的であり、その模様を活字にして発表しているだけ―という身勝手な企画である。よって今回も内容は薄く、自分本位なものとなる旨、初めにお詫びしておきたい。 何となく文体が林氏と似てきた気がするが、これは面会前日に林氏のコラム「マネージャーというお仕事」を、全編熟読したためだと思われる。ここで白状するが、私は本サイトの他コラムをほとんど読んでいない。お断りしておくが、興味が無い訳では決してない。時間がないのである。自分が書いたものさえ、読むことはあまりなく、「ああ出てるな・・・」と"眺める"だけなのである。まあとりあえず素直に「ごめんなさい―」 今回もうひとり、新田ジムの現役東大生マネージャーの酒井君を同行させた。彼はJBC発行のマネージャーライセンスを持っていない。来春、大手広告代理店への就職が内定している期限付きマネージャーである。スポーツマーケティング部門に所属して、ボクシングビジネスに携わることを希望している。期限付きではあるが、新田ジムでマネージャー業務をおこなうことでボクシング界について勉強し、少しでも人脈を築こうと頑張っている。ヨネクラジム、白井・具志堅ジムの両マネージャーから、少しでも何かを学び取ってもらおうと同行させた。 林氏のコラム全編を熟読して、改めて「この男はすごい」と感じた。本人は「とんでもないです」と謙遜するが、早稲田大学在学中からヨネクラジムでアルバイトを始め、そのまま卒業と同時にヨネクラジムに就職し、今では押しも押されぬマネージャーへと成長した。マッチメーク、外国との交渉、ポスターやチケットの手配、選手の就職の斡旋、銀行での諸業務、そして会長の秘書etc。「今は全部アイツにやってもらってるんだよ。優秀な男だよ・・・。」と、米倉会長は目じりを下げて私に自慢した。論理的な思考能力、対人折衝能力、業務の遂行能力、そして何よりもそれらを習得する為に必要な"チャレンジ精神"がひときわ輝いているように感じた。 少し誉めすぎてしまったかもしれないが、もうひとつ賞賛に値する逸話を紹介する。過日おこなわれたWBA世界ミドル級タイトルマッチ―チャンピオン ウィリアム・ジョッピー対保住直孝戦のマッチメークをまとめた話―。現在日本人がおこなう世界タイトルマッチのほとんどは、帝拳ジムの本田明彦会長を通して取りまとめられるという。英語が堪能で、海外のプロモーターと太いパイプを持つ本田会長を通さずに世界戦をまとめるのは、普通では考えられないことらしい。ところが林氏は単独でドン・キングプロモーターとFAXでやりとりし、日本でのジョッピー対保住戦を実現してしまった。「最後はやっぱり本田会長の助けをお借りして出来たことですよ。」と常に低姿勢を崩さないが、20代半ばでそれだけの大事業をやりとげるこの男、将来どんなビッグビジネスを手がけてゆくのだろうか。
1975年、東京生れの現在27歳。"未来予想図"について彼はこう語った― 「未来予想図は立場上、今は描いてはいけないものだと思うんです。今はとにかく米倉会長に忠誠を尽くすこと。後は今すべきことを一生懸命やることで道は開けて行くと思うんですよ。でも大きな夢はあります。将来、大きな世界戦をバンバン組めるようなプロモーターになりたい。そしてボクシングでお金を稼ぎたい。"ボクシングビジネスは金を稼げる"ことを証明してゆきたい。日本では、まだ帝拳の本田会長しかそれを実現していませんが・・・」 共感出来る点が多くある。ボクシングビジネスをより大きいものに成長させ、選手もプロモーターもみんな潤う時代がくればいいと思う。私はボクサー時代を含め、彼よりも長くこの業界にいるが、そういう観点での捉え方、生き方としては彼の方が大先輩である。今後、先輩として、ライバルとして、同志としてお付き合いいただければ幸甚である。 話は変わるが、名古屋での地元判定に関するJBCへの抗議、マスコミとボクシングに関する尾崎恵一氏との議論など、本サイト上でも林氏は度々何かの問題で誰かと議論を戦わせている。議論というのは、それなりの知識と情報がベースにあって尚且つ自分なりの意見や見解を持っていなくては成立しない。更にそれを論理的に表現し、相手の理論との相違点を理解した上で自分の主張を説明する行為―と定義づけてよいかと思う。(合っているかどうか分からないが・・・) 単なる罵倒やののしり合いではなく、"ディスカッション"ができる林氏や尾崎氏を尊敬してしまう。「政治家になりたいと思ったくらい、議論が好きなんですよ。」という林氏は、昔から食卓を囲んで家族同士常に議論をしていたという。 「新田さんも十分議論を戦わせてるじゃないですか・・・」そう言われてはっと気づくと、林氏を相手に「あーでもない、こーでもない」と反論している自分がいたりなんかして・・・。いやいや、今後このボクシング界で堂々と"ディスカッション"が出来る様に成長してゆきたいと思う。 さて、新田ジム現役東大生マネージャーの酒井君だが、ひと足お先に帰宅の途についた。彼が中座した後、マネージャーとしての彼について、私は皆に正に"議論"を投げかけた。"マネージャーとして"というのには、意味がある。もともと彼はプロ志望の練習生として新田ジムに入門してきた。練習生としては、プロを目指して大いに頑張ってもらいたいと思っている。
一方、前述した理由で期限付きマネージャーを担当している。しかし無理もないが、彼は"マネージャーというお仕事"とは一体どんなものなのか、未だよく分からないでいる。今回、林氏と栗田氏から少しでも何か学び取ってもらえればと考えていた。(かく言う私も勉強しなくてはならない身ではあるが・・・) 今回の道中で、彼にその旨話をした。私の思いを理解し、成長してくれることを願うわけだが、それに対して林氏は反論してきた。 「やはり新田さんの考え方は経営者的です。来春就職が決まっている状態でそこまで期待するのは無茶です。」 とはいえ、何度もお互いに確認してきたが、これは彼が望んでいることである。 「僕の場合は、マネージャーとしてヨネクラジムに就職し、会長に無理難題を課せられながら必死に乗り切ってきました。今の彼の立場では難しいですよ。」 そんなに甘いもんじゃない―という思いがあったのかも知れない。それ以上、この件については話さなかったが、経営者としてだけではなく、彼の成長のためにも出来る範囲で最善を尽くしてもらいたいというのが私の考えである。 今回は私自身の勉強会のようになってしまった。ジム経営について、後援会のあり方について、マッチメークのやり方などなど、林氏の講義は多岐にわたり内容も充実していた。まだスタートして半年も経たない新田ジムだが、3人のプロボクサーが生れている。(ちょうどこの原稿を書いている最中に、前日のプロテストで2人合格したという知らせが入った)。いよいよこの業界に参入だ。結局この日も朝帰りとなり、意識はもうろうとしていたが闘志はみなぎっていた。 |
