☆ こんな賞はいかが?
最近、ジムの選手たちに「Talk is Cheap読んでますよ」と声をかけられることが多くなった。私はこの連載を自分の選手たちに読まれることを想定していなかったので、少なからず戸惑いは隠せない。なんとなく気恥ずかしいというか、母親に感謝の手紙を書き(私はそんなことしたことないけど)、それを目の前で母親本人に読まれているような、そんな居心地の悪さを感じるのである。
これからは何を書くにつけても選手たちの視線を意識しなければならない、となると、萎縮してしまって言いたいことが書けなくなってしまう。「偉そうなこと言いやがって、ジムでは碌なマネージャーではないのに」なんて思われるんじゃないか、と考えると思わず筆も止まってしまう。あー恐ろしい。
ヨネクラジムの選手たちに告ぐ、この連載を読んではいけない。読んだら呪われます。呪われると、なぜだか試合が組まれなくなります。要注意。
声をかけられるといえば、先月は「尾崎氏に再反論はしないの?」と多数の方に尋ねられた。中には私と尾崎恵一氏が喧嘩していると思っている人がいるみたいで、ニヤニヤしながら「とことんやりなよ」などと、論争をけしかける輩もいらっしゃる。ですから、この場で皆様にお断りしておきますが、私はこのサイトをお堅い討論コーナーにするつもりはないし、ただでさえお忙しい尾崎氏を、私の屁理屈論議に付き合わせる気もない。ただ、多忙の合間を縫って、こんな若輩の私に、真面目に反論していただいた尾崎氏には心より感謝しています。ありがとうございました。私のしたかったことは「論争の決着」をつけることではなく、論争を世間に提供し、それをきっかけに皆様に考えて頂くこと、であるから、もう目的はほぼ達成したのではないかと思っている。まあ、また何か恰好のネタがあったら議論しましょう、尾崎さん。
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閑話休題、最近私は、ボクシング界の賞についてよく考える。月間や年間、あるいはトーナメントなどで、主にボクサーを対象に授与される各種様々な賞のことである。
昨年の新人王トーナメントの東日本決勝・全日本決勝で、うちの宮が、連続して技能賞を貰った。新人王に限らず、ヨネクラジムは伝統的に最優秀よりも技能賞に縁があるらしい。そもそも現役時代の米倉会長が、元祖・技能賞男であるし、最盛期の川島郭志さんにしても技能賞という栄誉がよく似合った。宮の技能賞もそれはそれで嬉しいし、選考してくれた方々には感謝している。ただ本音を言えば、宮にはMVPを取らせたかった。特に全日本では大いに受賞のチャンスがあると思ったから、悔しさのほうが大きい。結果的に全戦全勝全KOの選手のインパクトには勝てなかった。
なぜ、そんなにMVPにこだわるかというと、全日本新人王トーナメントの決勝は、スポーツ新聞の紙面の扱いが桁違いに大きいからである。決勝翌日の各紙の駅売りには、裏一面まるごと使い、鮮やかなカラーで新人王たちの記事が掲載される。とりわけ大きく目立つのが、MVPの選手なのである。電車に乗っている時、オジサンたちが開いている新聞の外側を、何気なく読んでしまうことがよくあるが、そこに、それこそ「松井」や「イチロー」という字と同じくらいの大きさで新人王最優秀選手の名前が躍っているのである。ボクシング人として、これほど嬉しいことはない。そういう栄光をヨネクラジムの選手にも味合わせたかった。
人気の面でも、MVPを取るのとそうでないのでは、格段に差がついてしまう。ここ何年かの新人王MVP男を見ていると、恩田選手、ゴメス選手など新人王以後も脚光を浴び続けているケースが多い。それだけMVPというのはインパクトが強いのだ。つくづく宮に獲得させたかった。
私としてはそんな悔しい思いをしたので、賞の選考基準は一体どうなっているんだろう?と半ば八つ当たり気味に分析しだしたわけである。
そうすると新人王というのは、ほかの賞に比べても、とりわけ複雑に様々なファクターが組み合わさっていることに気が付く。
@ それまでの戦績。やはり無敗記録やKO記録などは欠かせない。
A 本人のレベルの高さ。ずば抜けたセンスを持っている選手は当たり前だが有利である。
B 決勝当日の相手との組み合わせ。注目されている選手同士が当たれば、勝ったほうは何らかの賞を獲得する可能性が高い。相手がぱっとしない選手だと、いくら良い勝ち方をしても評価されにくい。
C 当日の試合内容のスリリングさ。逆転KOなどをすれば、特に評価される。
過去の集大成でもあり、その日一日の一発勝負でもある。運でもあり、相性でもあり、実力でもある。本当に新人王トーナメントで賞を取るのは大変なことだ。ボクシングというスポーツが、そもそもそういうものなのだと言われれば、身も蓋もないが。
ちなみに賞を決定するのは、報道陣の方々の投票によってだそうだ。今度から事前に選挙活動でもしてみるか。
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その他にも、ボクシング界にはいろいろな賞がある。
後楽園ホールで試合をするものにとって馴染みが深いのは、なんと言っても月間賞であろう。月ごとにMVP、敢闘賞それに新鋭賞が選ばれるので、どの選手でも比較的狙いやすいし、身近な目標となりやすい。表彰式は、後楽園ホールで、試合の時のメインイベント前などに行われるから、一般のお客さんに拍手を頂くことも出来て、ファンに顔と人柄を覚えてもらう絶好のチャンスにもなる。
ここで皆さん、質問です。月間賞を獲得できる「資格」をご存知だろうか?答えは、「ホールで8回戦以上を戦った者」というのがそれである。だから本当は、ホール以外の試合場で試合をした選手が敢闘賞を授与されるのもおかしいし、全日本新人王MVPになった選手がその月の新鋭賞に選ばれてしまうのも、ルール違反なのである(新人王は6回戦なのだから)。その証拠に、「ホールで8回戦を戦う選手」からは試合毎に月間賞協賛金なるものを協会が集金しているが、それ以外のボクサーからは一切徴収していない。つまり他会場で戦った者や、新人王になった選手が月間賞を獲得するのは、掛け金を支払っていない人が配当金を得ているようなもので、理にかなっていないことなのだ。だが実際にはよくあることである。現にうちの選手も昨年、両国国技館で試合をして敢闘賞を貰ってしまった。まあ、お目出度いことであるし、それほど莫大な金額が動いているわけでもないので、目くじらを立てて糾弾するのも大人げない。私も「いや協賛金を支払っていないので賞は辞退します」と毅然と断ることなく、黙って賞を受け取ってしまったのだから、誰かを非難する資格はないのだ。
ただ私見を述べさせてもらえば、全日本新人王のMVPに選ばれた選手を、また月間新鋭賞に選び直すのは、不自然な気がする。新人王の頂点に選ばれたことによって、散々、手厚く賞をもらっているのだ。トロフィーやら賞金やら、昔だったらラスベガスへの試合観戦旅行なども副賞として付けられていた。その上、同じ試合を対象にしてまた月間新鋭賞を授与されるのは、重複も甚だしいような気がするのだが、如何だろうか。しかも先ほど言ったように月間賞協賛金を支払っていないのに、だ。他に新鋭賞を授与されるべきボクサーはいるんじゃないかと私は考えてしまう。それとも私の意見は、賞に恵まれないヨネクラジムマネージャーのやっかみに過ぎないのだろうか。
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ボクサーのためには、いろいろな賞が設けられている。上で述べた新人王の三賞や月間賞以外にも、年間賞やカーニバルの三賞など、多くの表彰の機会がある。
また、最近では「エディタウンゼント賞」などトレーナーのための表彰制度も整ってきた。
そこで私はマネージャーという立場から、ボクサーやトレーナーだけを対象にするのではない、今までとは全く違った視点での賞はないものだろうか、と考えている。それは何も、ベストマネージャー賞なんていうのが出来て、将来、私自身が表彰されるようなことがあればいいなあ、なんていう色気から言っているわけでは、決してないわけではなくもない。
例えば「ナイスマッチメーク賞」。誰もが認める好カードを組んだら、その両陣営に対して送られる、なんていうのはどうだろう。普通、年間最高試合賞などは試合内容によって選考されるが、これはあくまでもマッチメークの決断自体を称えるので、たとえ実際の試合の中身がどんなにつまらないものであっても関係ない。好カードと期待されるほど凡戦が多いというのはこの世界の定説だが、凡戦になったからといって、その好カードの価値を減じるのはもったいない。ファンの期待にこたえたジムサイドを称えて下さいよ、というわけだ。
「豪華興行賞」。複数タイトルマッチを組んだり、スター選手が多数出場するような興行を主催したプロモーターに送られる。好カードを二つ組んだと言っても、売り上げが二倍になるとは限らない。しかし経費は確実に二倍かかる。それでも「豪華な興行にしたい」というプロモーターの心意気を買って欲しい。
「ポスター大賞」。試合のポスターは何気なく作られているように思われるかもしれないが、案外、デザイナーや印刷会社が精魂込めて作っているものだ。中には芸術的とも言えるポスターもあるし、奇抜なデザインやキャッチコピーで話題を集めることもある。そういったものを表彰するようにすれば、せっかく趣向を凝らして作られているポスターに、さらに注目が集まるようになるのではないか。
その他にも良いレフェリングをした審判を表彰したりするとか(常日頃、責められてばかりいるのだ。お見事!というレフェリングをした時くらいは世間が称えるべきだと思う)、普段、日の当たらないところで活躍している人々を取り上げる賞が、もっともっとあっても良いのではないか、と私は思う。
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ちなみに、ホールのみで行われている「その日の4回戦のうちで最も面白い試合をした選手」に送られるという「ウイニング賞」は、すごく画期的なアイデアだと思う。先日、新人王の予選で、ダウン応酬の末うちの選手が判定に敗れるという試合があったが、その日はなんと、その試合の勝者と共に、負けた方のうちの選手も同時に「ウイニング賞」を受賞したのである。それだけ白熱した打撃戦だったと認められたからだが、それにしても、なんとも粋な計らいである。リング上でお互い再戦の約束をするというマイクパフォーマンスまで飛び出して、会場のお客さんたちは拍手喝采だった。賞によって、4回戦でもこれだけ盛り上がることが出来る、という良い例になったと思う。
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