極私的ボクシングの歩き方
女子ボクシング(アマチュア)の歩き方 Text Photo By 中津川 一路




 3月13日。東京都日野自動車健保プラザで行われた全日本女子アマチュアボクシング選手権を観戦に行ってまいりました。

 昨年から女子ボクシングが公式に認められ、東京都選手権などが行われてきましたが、この度、初めての全日本選手権が行われることになったのです。黎明期であるこの競技を一観客として見たこの大会をリポートしたいと思います。


 会場まで車で行ったので、係員の人に「駐車場はどこですか?」と尋ねると、「役員の人以外の駐車は基本的にだめなんですよ。」とのお返事。周囲は住宅地で有料駐車場など見当たらず。

 仕方ないので右往左往。何とか法律に触れず路上駐車。会場へ。


 会場は4階。会場の入り口には既に多くの観客や関係者がごったがえして、中々の熱気。いやー、けっこう集まってるなーと思いつつ、場内へ。

 場内は高校のボクシング道場という趣だ。

 既に椅子は殆ど埋まっていたので、私は最後列に立ってリングを見た。ちょうど演技の部が始まるところだった。

 ボクシングで型?空手なら型は男子でも正式種目だが、ボクシングではどんなものだろう・・。噂には聞いていたが、実際はどんなものなのだろう?正直、興味がそそられた。

 リングにゼッケンを4人上がった。まずシャドーを2分1R。殆どの選手がワンツーを主体にした、「日本のアマチュアボクシング」のシャドーをしていた。そして縄跳びを2分2R。ラスト30では、それがアピールポイントになるのだろうか、各自二重跳びをしたり、足あげをする選手もいる。

 次は腕立て伏せ10回。審判の笛に合わせて行う。続いて腹筋。手を胸の前でクロスさせ、笛に合わせて、やはり10回行っていた。

 そしてサンドバック打ち。最初は停止位置からの左ストレート。そしてステップインしての左ストレート。停止位置からの右ストレート、ステップしての右ストレート、ワンツー、ワンツーから返しの左ストレートというワンツースリー、最後は右からのワンツースリー。

 それを約30秒ほど続け、その間に審判が採点し、全員が採点し終わると手を上げ、演技終了。あとで合計するのだろうか。アマチュアボクシングの基本練習が垣間見えて面白いといえば面白かった。指導陣からは「引きを早く!」とか「もっと強く!」とか声がかかっていたのは、申し訳ないが何か違和感を感じてしまった。 そのまま、軽量級、中軽量級、中量級の階級別、4人一組に分かれての演技は続いた。全部で6組ほど。時間にして2時間くらいだっただろうか。

 休憩を挟んで午後1時から実戦の部が始まった。昨日は1回戦で、今日は決勝戦らしい。 

まずはピン級(45kg)。

 長身サウスポー鈴木由子((株)オキシー)と短躯の右ファイター、永易選手の試合だった。ファイターの永易選手は右のストレートを上下に打ち分けて前に出て先制した。サウスポーはやや攻勢にとまどったようだが、徐々に足とジャブを使い距離をとり、左ストレートでカウンターを当て始める。1ラウンドはややファイター優勢か、と思ったところで左ストレートがクリーンヒットし、ゴング。

インターバルになり、やや興奮している自分に気がついた。初めて生で見た女子の試合ということも大きかった。

 ともかく、両者ともレベルが高い。男子に比べればスピードやパワーで劣るのは仕方ないにしても、永易選手は右ストレートをダブルで上下に打ったり、中々のものだ。

 2回目になるとサウスポーがストレートを放ち、ファイターを突き放しポイントを上げたように見えた。

 3回目は一進一退。ラスト30あたりでファイターが猛然とラッシュ、ポイントを上げたかに見えた。しかしアマチュアの判定は本当にわからないので、どっちに転ぶのか?と思ったとおり、判定はサウスポーに上がった。ファイターのラッシュよりも、左ストレートのカウンターに上がった、ということなのだろうか。採点の結果は聞き取れなかった。

 型の部でもフック、アッパーが使われていないようにストレートが重要視され、ロングストレートのクリーンヒットが日本のアマチュアボクシングではやはり重要視されるのだなあ、と思った。しかし、パンチのバリエーションには色々なパターンがあるのに、ストレートにポイントが流れてしまうのはなぜなのだろう?

 関係ないが昔、2度オリンピック代表になったアマ史上屈指のパワーヒッター、東悟選手がガードを上げ、ブロックしながら相手をロープに詰め、左右フック、アッパーでバタバタと倒していたのを思い出した。


● アマチュアボクシングの採点法・・・簡単にいうとクリーンヒットのヒット数を競う。ダウンをさせても1発は1発としてカウントされるということ。採点は20点からの減点法。反則は2回までは警告3回で1点減点となる。軽い触るようなパンチでもよいのか?とお思いの方もいると思うが、「肩の重みを伴ったパンチ」ということがルール上明記されている。ジャッジによる減点法は主観による採点のばらつきや、オリンピックなどでの判定不服が原因の暴動が起き、ボタンを押すコンピューター方式が国際大会などで導入されるようになった。日本でも国体と全日本で準決勝の試合で使われている。

● 東悟・・・ロサンゼルス、ソウルオリンピック代表選手。アマチュアには似つかわしくない倒しぷりは有名。手を出さずに相手をロープに詰め乱打するアンチアマスタイルでKO・RSCの山を築いた。その後、プロ入り。古城賢一郎(J・ライト)、リック吉村(ライト)に挑戦するが一歩及ばず。37歳で定年。


 続いてライトフライ級(48K)はサウスポー同士の対戦。両方ともカウンターを得意とするタイプらしく、フェイントを掛け合う状態が続いてしまい、審判から打ち合うことを再三警告され、両者とも減点を受ける。

 両選手ともフットワーク、パンチともスピードがあるが、東京代表の小関桃選手(日本女子体育大学)のほうがややスピードがあり、精度の高いボクシングをしていた。お互いにクリーンヒットの少ない展開だったが、相手が出るところにタイミングよく左を決め、ポイントを拾って行った。
 見た目通り判定は古関選手だった。

 続いてはフライ級(50K)。フライ級は人数が多いため2ブロックに分けてのトーナメントになったようだ。Aブロック、東京都の柳瀬麻美選手(東京宇佐美)はガードを胸の辺りまで下げ、フェイントをかけながらジャブから右のクロスを放つ。それが相手のヘッドギアを捉えるとバシンと重みを感じさせる音がした。今までの選手とはあきらかに違う打撃音に、場内から「おお〜」と感嘆の声が上がる。ワンツーからの左フックをミスしても、そのフォロースルーの効いた打ち方にも同様の嘆声が。3発目をストレートで打て、との声もあったが、肩を入れて振りぬいたレフトフックの方が観客としては楽しい。
 柳瀬選手はスピード、パワー、テクニックともに、ずば抜けているように見えた。相手もよく耐えて反撃するが、形勢を逆転するには至らない。
 僕の後ろに立っていた高校生が「お前より強いよ。」などと会話しているのが聞こえた。
 3回にオープンブローで減点をされるが、強烈なストレートジャブで突き放し展開は変わらず。一度左右ボディから上に返すコンビネーションを決めると「うまいな」という声があちらこちらから聞こえた。そのまま判定へ。
 文句なしに柳瀬選手の勝ち。

 続いてのフライ級Bは藤岡奈穂子選手((株)三陸ガス)が正面からのパワーファイトで押しまくり1回にスタンディングダウンを奪い、2回目も右でカウントを聞かせるとそのままレフリーは試合をストップ。もし柳瀬選手と決勝が行われていたら、伯仲した試合になっていっただろう。


 バンタム級(52K)はクロスファイトだった。高校生と社会人の組み合わせだったが、ほんとうに一進一退。これも判定がわからない・・・と思った後半。社会人の江畑佳代子選手(共同広告)がコンビネーションの中に織り交ぜた右アッパーが、うつむきがちの高校生の顔をこすり上げ続けると、彼女はややスローダウン。そのまま、手数で押切られてしまった。

 フェザー級はエントリーなし。ライト級は不戦勝。

 ライトウェルター(60K)は長身のボクサーとやや身長で劣る選手。長身のボクサー、石垣多佳(酒田南高校教員)が左右ストレートをヒットして、判定勝ち。体の大きさ通り迫力のある、セオリーどおりのボクシングをしていた。

 全般を見て思ったことは、競技内容はレベルが高いということ。同行した人間は女子プロボクシングの興行も見たことがあり、僕はその比較を聞いた。「一部の選手を除いてレベルはアマの方が上に思えた。」との答えが返ってきた。

 中味を考えると、もっと一般にアピールしての大会になってもよかったのではないか、と思った。お台場にあるTV局のカメラも来ていたし、「フライデー」で出場する高校生が取り上げられていたり、注目度は低くなかったので、狭い道場のような場所でやるのは勿体無い、としか言いようがない。確かに大会運営には費用もかかるだろうが、世間に注目されるような動きも必要なのではないか。
 如何にアマチュアスポーツとはいえ、ラグビーにしても昔から入場料金は取って、国立競技場をいっぱいにしていたこともあったし、それは他のアマチュアスポーツでも同様だ。海外では賞金のかかる大会もあるという。

 無理な料金設定はともかく、大会を運営してくための費用を補助する程度の入場料はあってしかるべきだと思う。また、これだけ注目度の高い大会なら、ゼッケンに入れるスポンサー探しも不可能ではなかったような気がする。

 いかにアマチュア選手でもそれなりの舞台設定があってもいいのではないだろうか。選手は少しでも華やかな舞台で戦いたいはずだ。先日TVでアマチュアレスリングの全日本選手権の中継を見たときに、そのショーアップされた運営に驚いた。 更に聞き取りやすいアナウンス。選手紹介。音楽。アマチュアボクシングの、このストイックさ、マイナーさ、またそれも名もなく清く美しいのか・・・・・・ 車を停めた路上に向かいながら、自答した。


 しかし、競技としてのレベル高い。もし、どこかで試合の情報を見かけたら一般のファンも会場に足を運んでみるべき! 


●女子プロボクシングはキック団体が統括しており、JBCの管轄外である。アマチュアボクシングとプロボクシングが殆どリンクしないように、女子プロボクシングと男子プロボクシング、女子アマチュアとプロは、リンクせずこのまま進んでいくのだろうか?才能ある選手がマイナーな舞台で選手生活を終えないように一本化、もしくはスムーズな交流を望みたい。

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