☆ 先月私が話題にしたアルマン・ピカルが、ミンダナオの空港爆破テロに巻き込まれ亡くなったという知らせが入った。子供は今、何歳なのだろうか。あの人懐っこい笑顔が目に浮かぶ。ご冥福をお祈りする次第である。
☆ マスコミとボクシング
ヤバイのである。大変な事態なのだ。なぜ、このことを誰も言わないのだろう。
皆様は気付いておられるだろうか。
最近、スポーツ新聞におけるボクシングの扱いが、ちょっと信じられないくらい小さいのだ。特に試合翌日、結果を伝える記事があまりにも惨めで、涙があふれて文字が読めないくらいのものである。先日行なわれた「湯場
対 佐々木」の翌日のスポーツ各紙。その扱いにはただただびっくりした。薄々分かっていたことを改めて実感させられたという感じだ。
だって、湯場選手は中重量級で久々に登場した「世界に通用するかもしれない本格派サウスポー」ですよ。そして下馬評圧倒的不利を覆した佐々木選手は、毎回入場衣装に凝る異色の早大卒ボクサーだ。役者に不足など全然ない。試合も激しい打ち合いで面白かったし、私自身あの場にいて「歴史を目撃した」とさえ思ったものだ。とにかく佐々木選手という新たなスターが誕生した瞬間であったことに間違いない。またボクシングに限らず、「番狂わせ」というのはスポーツの醍醐味であり、大ニュースの筈である。
だが次の日のスポーツ新聞を見ると、一段か二段かの慎ましい大きさで、淡々と結果を報じているものばかりであった。それはもう本当に冷静な文章で、静かに事実を述べているのであった。何だか「歴史を目撃した!」と興奮していた自分自身が恥ずかしくなってしまった。
私がボクシング界に入った6、7年前は、その頃からすでに人気低迷が叫ばれてはいたものの、さすがに日本タイトルマッチの詳報くらいは、写真付きで面の4分の1くらいは占領していたように記憶している。いつからこんなことになってしまったのだろう。
当然ながら、このことでスポーツ新聞のボクシング担当記者自身に文句を言うのは筋違いである。彼らだって担当として、ボクシングを大きく扱って欲しいと思って仕事をしているはずである。自分の携わっている分野が社内で軽く見られていて平気でいる人間はいない。
では問題は、紙面のレイアウトを決める人であろうか。いやいや、個人を責めるだけでは事の本質は見えない。レイアウトの方針、それはひいては会社の方針ということにつながるし、マスコミの方針とは何なのかということを突き詰めれば、要するに世間の人気というところに辿り着いてしまうのである。
そうなのだ。もう記事にもされないくらいボクシングは、マスコミおよび世間に見捨てられかけているのだ。
一般のファンの方が業界批判の一環としてよく言う。「ボクシング界は宣伝が下手だ。もっとマスコミを利用して世間にアピールしなければいけない」と。もちろん私たち業界人は宣伝が上手くない。内外から智恵をお借りしてボクシングをアピールする方法を考えるのは、私たちの責任である。
しかし「マスコミを利用する」という行為は言うは易しで、実際は簡単に宣伝させてくれるほど、マスコミなるものは甘くはないのである。
例えばヨネクラジムは昔からテレビ朝日との付き合いが長いので、後援者などに「選手をニュースステーションに出演させて宣伝すればいいのに」と指摘される。そりゃ、ニュースステーションはテレ朝の看板番組であるから、そこに出してもらえればこれは良い宣伝になるだろう。ただ問題は「ニュースステーションにどうやったら取り上げてもらえるのか」というところにある、ということを知って頂きたい。
世界戦の前などになると、ボクシング担当プロデューサーが、ニュースステーションに取り上げてもらうよう、報道の部署に申請を出すのである。「よし、よかろう」と許可が下りれば、ほんの数秒、練習しているシーンなどが写し出されることになる。つまり、Nステ側から見れば、テレ朝のドル箱番組の貴重な時間を使うのだから、それなりの話題でなければ取り上げられないよ、他の部署からも同じような申請がたくさんきているしねー、といったところなのである。大変、頭が高いのである。
「テレビ朝日がその世界戦を放映するのだから、協力くらいしてくれたって良いじゃないか」という感傷的な嘆願は通用しない。テレビ局ほどの大組織になれば、部署ごとに縄張りがあって、彼らの間のパワーゲームや綱引きの結果が、冷淡に浮かび上がってしまうのだ。
率直に言ってボクシングは、そのパワーゲーム上において、立場が弱い。だから定期番組は深夜に追いやられ、スポーツ紙の記事は徐々に小さくなっていく。
「マスコミに露出してボクシング人気を向上する」という方法論が、「ボクシングに人気がないからマスコミに露出できない」という冷酷な現実によって、ねじ伏せられているのである。
これはチョット真剣に考えなければ事態である。
協会の執行部が、マスコミのボクシング担当者たちを呼んで、食事でも共にしながら、どうしたらいいでしょうか、と単刀直入に聞いた方が良いかもしれない。そういう会合を月に一度でも開いて解答を探っていくより他に道がないような気がする。
皆様に他に知恵はあるだろうか?ぜひご教示頂きたい。
お断り… この原稿を書いている時点でヨネクラジムにトラブル発生のため、書き続けられなくなりました。この続きは次号に掲載させて頂きます。
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